独立行政法人産業安全研究所 と独立行政法人産業医学総合研究所は平成18年4月1日をもって統合しました。
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産業安全研究所研究報告 NIIS-RR-2003(2004)の抄録

フロアクライミングクレーンの耐震性能に関する研究
吉見雅行,高梨成次
  フロアクライミングクレーンは建物上部に設置され,地震時には建物によって増幅された振動を受ける。しかし,現状の耐震規格では,他形式のクレーンと同一の水平震度0.2が採用されている。そこで,フロアクライミングクレーンの地震応答の評価を目的として,基本的な模型振動台実験および数値解析を行った。また,マスト高さを変化させる共振回避策についての基礎的な解析的検討も行った。
 実験の結果,フロアクライミングクレーンの応答は建物と共振しない場合でも地表加速度の3.5-6.7倍になった。他の形式のクレーンと同等の耐震性能を付与するには現状の1.5-3.5倍程度の水平力を考慮する必要があることが明らかになった。また,数値解析より,クレーンと主構造物が共振する際には少なくとも5倍の水平力を考慮する必要があることを明らかにした。(図13,表8,参考文献13)
磁気粘性流体を用いたロボット用アクチュエータと
安全インターロックシステム
齋藤 剛,池田博康
 NC型クラッチの特性を有する磁気粘性流体を用いた拮抗回転型アクチュエータユニットを開発し,さらに,垂直多関節ロボットのトルク出力を監視する安全インターロックシステムへの応用を検討した。人間とロボットが協調して一つの重量物を運搬する作業形態における挟圧災害の防止を目的とし,ロボットのトルク出力に含まれる重力補償分に着目したトルク監視手法を提案し,これを非対称誤りの条件で実現する手段として,開発したアクチュエータユニットをロボットの駆動源に利用した。実規模実験の結果から,構築したシステムの安全機能を評価し,過大なトルク出力に対する所用の緊急停止性能が実現されていることを確認した。(図23,写真4,表2,参考文献23)
ボイラ用安全弁の新機構と
安全制御システムの開発に関する研究
清水尚憲,齋藤 剛,池田博康
  ボイラシステムを安全に運転するためには機能を向上させるための回路とは別に安全を確認するためのインターロックを用意する必要がある。そこで、感温フェライトの物理特性を用いたフェールセーフな温度スイッチを開発し、炉内圧力(飽和蒸気温度)を直接監視することで、燃料遮断弁を制御回路からの出力とは別に直接駆動するシステムを提案した。また、機能性流体と永久磁石を使った吹出し圧力の調整を必要としない安全弁を開発した。それぞれの装置については、実際のボイラ運転時における安全性の検証を行い、基礎的機能を実現できることを確認した。(図13,写真2,表7,参考文献11)
地中構造物と地盤の動的な相互作用による
地盤反力特性に関する研究
玉手 聡,豊澤康男,末政直晃,片田敏行,平野秀司
  クライミングクレーンなどの杭基礎で支持された作業施設の安定性は,地盤や基礎などの下部構造体に大きな影響を受ける。特に繰り返し荷重の載荷は地盤の剛性や強度を低下させ,杭基礎構造物を不安定化させる可能性がある。本研究では,杭基礎に支持された構造物の地震時安定性を実験的に検討した。その結果,軟弱粘土地盤に設置された杭が,地震により相対的に大きく振動すると,地盤上層の地盤反力は振動回数の増加に伴って急激に減少することが分かった。また,杭に生じる曲げモーメントの深度分布は,地盤の振動モードにより大きく異なることが確められた。特に地盤の振動モードが1次の場合は,杭基礎が地盤と一体化して変位し,杭頭部に最大の曲げモーメントが発生した。一方,地盤の振動モードが2次の場合は,杭基礎と基盤の相対変位が小さくなり,杭体の曲げモーメントは地中部で最大となることが分った。 (図16,写真1,表4,参考文献10)
鋼矢板控え壁を有する自立式土留工の安定性
―軟弱粘土地盤を対象として―
豊澤康男,堀井宣幸,藤田範夫,佐藤光雄,宿利幸広,衛藤 誠
 自立式土留め壁の背面に控え壁及び支圧壁を配する控え壁式自立鋼矢板工法(SCB工法)の変形・崩壊メカニズムを把握するために軟弱地盤を対象として遠心模型実験を行った結果,次の知見を得た。 1)砂地盤と同様に軟弱粘土地盤においても通常の自立式土留め壁に控え壁+支圧壁を設置することで掘削に伴う土留め頭部の変位量及び土留めに生じる曲げモーメントの両方に対し抑制効果が得られた。2)控え壁の設置間隔が土留め壁の安定性に影響している。3)本工法は従来の自立式土留め工法に比べ,変位量が抑制されるため自立式と同程度の変位量を想定すると根入れ長が低減できる。本実験では,大変形が生じる掘削深さは,通常の自立式土留めに比べて,控え壁式自立鋼矢板の掘削深さが約2倍となった。(図18,表3,写真6,参考文献8)
電撃危険性推定のための1回路モデル
山野英記
近年は,地絡故障が生じた時の地絡電流(又は,誤って人体が接触した時の身体電流)として商用交流又は直流以外の波形や周波数の電流の想定される状況が増加しつつある。太陽光発電や風力発電等々の普及につれて,インバータ等の電力変換機器の増加のためである。商用交流及び直流以外の電流の許容限界は未知であることが多い。本稿では,回路モデルによってその電流の電撃危険性(心室細動)を推定するというアプローチを検討した。その結果,ある程度の範囲で,この回路モデルにより,既知の許容限界を表すことができることが明らかになった。このアプローチは,感電保護の一助になる可能性があると考えられる。 (図7, 表1, 参考文献6)
バグフィルタでの粉じん剥離帯電特性と
金属粉じんの放電現象
山隈瑞樹,児玉勉
 バグフィルタ式集じん機で発生した粉じん爆発災害の発生機構を調査する目的で,小型集じん機を用いて,高圧パルスエアの吹きつけ(逆洗)時にフィルタから剥離した粉じんの帯電量を測定するとともに,Al粉じんを付着したフィルタからの放電現象を観測した。その結果,粒径が粗いか又は形状が角の取れた丸い粉じんは,逆洗により剥離しやすく,かつ,大きく帯電した。例えば,Al粉じんの中には70 μC/kgを超えるものがあった。剥離面が起毛である場合には,フィルタの抵抗率と粉じんの見かけの抵抗率の間にはほとんど相関関係は見られなかったが,アイロン面(平滑面)の場合には,粉体の抵抗率が大きいほど帯電量が増加する傾向が見られた。帯電防止フィルタのうち,細い導電性繊維を全体に分散し混合させたタイプには,逆洗時の帯電量を大きく減少させる効果が認められた。Al粉じんがフィルタに密に付着し,かつ,飛散しにくい場合には,帯電すると着火性があると思われる放電が観測された。(図13,表2,参考文献10)
大気圧グロー放電を用いた除電器の開発
大澤 敦
 空気中で大気圧グロー放電を安定して発生させる電極構造を考案し,これを除電器に応用した。このグロー放電除電器はイオンバランスに優れており,さらに,直流バイアスまたはグリッド電極により放電あるいは除電イオン流を制御することによって精密なイオンバランス制御が可能であることを示した。 (図10,参考文献15)
粉体プロセスのコンピュータシミュレーションによる
静電気危険性評価
大澤 敦
 放電と堆積粉体の電荷緩和モデルを考案し,帯電粉体のサイロ充填のシミュレーションを改良した。今回の改良で,放電の起きる時刻と場所,そのときの放電電荷及び放電エネルギーが計算できるようになり,より現実的なシミュレーションが可能となり,現実的な静電気の危険性評価にも応用できるようになった。結果は実験ともよく一致し,実験でも観測されているようにヒープ表面で着火性放電が起きることを証明した。(表2,図6,参考文献20)
粉体用除電器によるサイロ内着火性放電の抑制
児玉 勉,鈴木輝夫,最上智史
 粉体の空気輸送用サイロにおける静電気放電火花を着火源とする粉じん爆発を防止するため,サイロの充填パイプに取り付ける粉体用除電器を開発し,実規模大の空気輸送実験により着火性放電の抑制効果を確認した。粉体用除電器は金属製短管の円周上に2段,計16本のノズル型イオナイザを取り付けたもので,イオナイザに直流,周波数・波形の異なる交流を印加してそれぞれの除電特性を調べた。その結果,50Hz交流印加では除電不足となり,直流印加では除電過多による逆帯電を起こす問題点が判明した。そこで,これを解決するため,粉体用除電器の後に取り付ける配管電界検出器の出力信号により除電器をフィードバック制御するシステムを開発し,これが着火性放電の抑制に有効であることを明らかにした。(図23,写真6,参考文献23)
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