序
近年,粉体技術の進展に伴って,原材料や製品などの物質が粉体として取扱われる産業工程が増加するとともに,粉体の種類も多岐にわたるため,その取扱い量も莫大なものに達する。さらに,高度技術にとって,粉体技術が不可欠のものになりつつあり,微粒子や超微粒子,ナノ微粒子などとして粉体はますますファイン化され,従来利用されることのなかった金属や化合物が,粉体の形態を取る新素材物質として活用されるようにもなっている。このように,産業における粉体の役割はますます重要になってきているが,これらの粉体が可燃性である場合は,ガス爆発や石油火災に匹敵するような可燃性粉体の火災や粉じん爆発の潜在的危険性を忘れてはならない。可燃性粉体の種類や取扱い量の増加は,これらの火災・爆発危険性を増大させるばかりでなく,いったん災害に至れば,場合によっては人災を伴う悲惨な労働災害や多大な損害を招く設備破壊や粉体製品の焼失を引き起こし,企業としての社会的責任も問われることにもなりかねない。
我が国では,過去39年間で248件の粉じん爆発が工場で発生したと報告されているが,その災害防止を確立する第一歩として,事前の可燃性粉じんの危険性評価が重要である。このような考え方は,化学物質の危険性予測・評価システムと同じものであるが,無数ともいえる化学物質ではそれらの有する化学的性質や化学構造が重要な情報となるのに対して,単に燃えるといった可燃性粉じんでは多少異なった評価が必要である。
労働安全衛生法には,若干の可燃性粉じんの種類や粉じん爆発の防止措置が規制されているが,粉体技術の進歩は早く,また着火源や可燃性粉じんの種類は多種多様であるため,具体的な可燃性粉じんの爆発危険性の評価法や防止対策については法規制だけでは不十分な面がある。
このような粉じん爆発の危険性評価及び防止対策の重要性を認識して,かねてから(社)日本粉体工業技術協会では,粉じん爆発試験法委員会を設置して爆発試験方法を審議の結果,1991年同協会規格「粉じん爆発性試験方法」を制定した。しかし,同試験方法は,粉じん爆発のしやすさに基づいた粉じん爆発性を評価の目的としたもので,粉じん爆発が発生した場合の爆発の激しさの評価を目的とした試験方法の作成までには至らなかった。
当研究所は,長年,化学物質の火災・爆発危険性や粉じん爆発災害の防止研究を実施してきた関係から,産業界の協力を得て,粉じん爆発の激しさの評価に関する規格作成を図る必要性を認め,(社)産業安全技術協会に対して,この件に関する原案作成を依頼した。本指針は同協会に設けられた「粉じん爆発試験法の技術指針研究委員会」において,一年5ヵ月にわたる審議を重ねた結果まとめられた答申をもとに補足検討を加え,技術指針として公表することにしたものである。
最後に,今回の指針原案の作成に当たりご協力を項いた(社)産業安全技術協会並びに関係委員各位,及び本指針作成の端緒を開かれ,かつ多大な協力を項き,参考資料として APS002規格「粉じん爆発性試験方法」の掲載を許可された(社)日本粉体工業技術協会に対して深く感謝の意を表する。
平成6年1月20日
労働省産業安全研究所 所長 木下 鈞一
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