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National Institute of Industrial Health

「疲労蓄積度チェック」は
日本人の働き方を見直すキッカケとなるか

作業条件適応研究部 岩崎 健二

平成15年6月、厚生労働省から「労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト」試行版が公表され、大きな反響を呼んでいます。長引く不況や人事労務管理制度の変化などで働く人の心身の負担への関心が高まっていることを反映していると考えられます。

私の所属する研究グループでは長時間労働が常態化している数ヶ所の職場で調査を行っていますが、どの職場でも長時間労働者は、睡眠時間が短く、疲労自覚症状が多いという結果でした。また、疲労自覚症状とリンパ球中のCD56陽性細胞割合の低下(図)などとの関連も示唆されました。過重労働の影響というと過労死(脳・心臓疾患)をまず思い浮かべる人が多いと思いますがそれは氷山の一角で、免疫機能の低下、精神疾患などの健康影響、事故や仕事上のミス、生産性の低下など多方面への影響が考えられます。

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疲れが翌朝まで残ることがある

厚生労働省の「疲労蓄積度チェックリスト作成委員会」は昨年7月に活動を開始しましたが、筆者はこれまで長時間労働や深夜労働の研究に携わり疲労に興味があったこともあり、委員として積極的に参加させていただきました。脳・心臓疾患の新認定基準でいう「疲労の蓄積」とは、"過重な労働負荷の長期間の作用により生じ、脳・心臓疾患の発症につながりうる状態"ということで、必ずしも疲労の自覚症状だけで推定できないのが難しい所です。日航機の墜落事故で話題になった金属疲労のように、負荷の繰り返しによりミクロな損傷が進んでいても、ある段階まではマクロな機能にはほとんど影響の出ないことがありうるからです。血管障害の場合も、これにあてはまる可能性が高いのです。また、業務の遂行に気を取られて疲労症状に気づかないことも良くあります。このような背景から作成委員会は、疲労の蓄積をもたらす"勤務の状況(長時間労働、精神的負担など)"と"自覚症状"の両方から「疲労の蓄積」を推定するチェックリストを試作しました。

「疲労蓄積度チェック」の目的は、疲労蓄積度のチェック結果から、過度の労働・生活負担を改善し、健康障害、事故、生産性の低下などを未然に防ぐことです。疲労チェック結果から労働負担等の改善が実行されるためには、
1)「疲労の蓄積」がもたらしている影響について、働く人がその大きさに気づき明確な改善の動機を持つことが出来る、
2)急速に変化しつつある社会経済状況下において、働き方の見直しを自分の頭で考えることが出来る、
の2つの条件が必要です。「疲労蓄積度チェック」が十分に活用されるためには、産業保健関係者は上記2つの条件を実現するための情報を整備するなど、様々な努力を重ねる必要があります。

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