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National Institute of Industrial Health

運動すると「目」はよくなりますか

有害性評価研究部 鈴木 亮

運動すると健康が増進され生活習慣病も改善されます。適度の運動で心身は活性化し、免疫機能も上昇します。これらはすでに常識ですが、運動すると物が見やすくなるという感覚をお持ちの方も多いと思います。運動で目がよくなるといえるのかどうか、今回は眼圧の関係から考えてみましょう。

運動を3種類に分けて、どのような運動が最も眼圧に影響するか、そのとき血圧や全身状態はどうかということを調べてみました。3種類とも、眼圧が下がったので、その後、総エネルギー量をほぼ一定にして、運動強度が眼圧に影響するかを検討しました(図)。ボランティアで、ベースラインの眼圧が18mmHg以内にある群について、ランニングと速歩きを行ないました。すなわち、激しく短い運動はランニングで、70%心拍(HR)、7.5分間(図左)であり、楽で長い速歩きは40%HRで25分の運動(図)です。両者とも計算上は消費エネルギーはほぼ同じですが、運動強度が大きい方が、眼圧はよく下がりました。

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激しく短い運動(左)と軽度で長い運動(右)ではどちらが眼圧が下がるか

運動の意外なこの効用は、運動で眼の上強膜静脈圧が下がるためかもしれませんが、眼の小さな末梢静脈には平滑筋もないので、圧調節能があるとは考えられませんし、プロテオグリカンなどによる房水流出抵抗が短時間に改善することもないでしょう。

運動で目が見やすくなるのは涙液が位置的、質的に均等になることもありましょう。涙と角膜上皮が滑らかな眼表面を形成すると、乱反射などは著しく軽減するし、眼瞼の圧迫改善や脈絡膜血管叢の再分布もそれなりに役立っているでしょう。さらに単に気分の上での改善という可能性も否定できません。しかし脳を爽快気分にさせる化学物質が視細胞を活性化させるなどという根拠はまだありませんし、運動で産生された快感物質の脳への影響によって、見え方が主観的に向上するだけだとは考えにくいのです。

目を酷使する人々、種々のストレスにばく露されている労働者や高齢者の方々の目の見え方や視機能はどうすれば早期に発見でき、改善でき、予防できるのでしょうか。こういった先進国特有の新しい産業医学や未知の労働衛生学を産医研で私たちは切り開こうと考えはじめています。客観評価として、従来の動体視力や昼間視力、調節機能検査、網膜の電気生理、聞き取り調査などは健康異常を検討するメルクマールとしては不適当かつ不十分です。職場環境(匂い、騒音、温湿度、ストレス、多種化学物質過敏状態)などは中枢、感覚器、自律神経系にも影響するので、視機能の微細な変化やマルチフォーカルな電気現象を通して、対策がたてられる時代になりつつあります。

私たちの研究が進めば、病気を作り上げるのではなく,疫学などの貴重な成果も、科学的に解析でき重要性をさらに増してくるかと思います。

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