![]() 独立行政法人産業安全研究所 と独立行政法人産業医学総合研究所は平成18年4月1日をもって統合し,独立行政法人労働安全衛生総合研究所となりました。 このページは,(旧)独立行政法人産業医学総合研究所のコンテンツです。(平成17年度までの事業関連等,一部統合後に更新されたものも含みます。平成18年10月2日をもって,このページの更新は終了しています。) |
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喫煙と免疫作業条件適応研究部 中田 光紀喫煙が様々な疾病の発症リスクを高めることは、今や誰もが知る事実となりました。我が国では喫煙によって男性(女性)の肺がんの死亡率が非喫煙者に比べ4.5(2.3)倍、こう頭がん32.5(3.3)倍、食道がん2.2(1.8)倍、動脈瘤2.4(4.4)倍、虚血性心疾患1.7(1.9)倍、脳血管疾患1.1(1.2)倍で全死因では1.3(1.3)倍であると報告され、喫煙による死亡は男性では人口の18%、女性では5%程度と推定されています(平山、1990)。この事実は日本だけでなく欧米先進国でも確認されており、喫煙は予防可能な、最大の疾病と早死の危険因子であると結論されるに至りました。 さて、喫煙によって健康を損なう背景には、身体を守る免疫系の働きが低下することが知られています。これまでの研究成果から喫煙は、1)末梢血中の白血球数及びリンパ球数の増加、2)腫瘍やウィルスに感染した細胞を破壊するナチュラルキラー(NK)細胞の機能(NK細胞活性)の低下、3)免疫グロブリンG、A及びMなどの抗体価の減少、4)インターロイキン(IL)-2、IL-4、IL-6、腫瘍壊死因子αやβなど炎症性サイトカイン量の増加等を引き起こすことが分かっています。今回はこの中でも、特に喫煙がリンパ球に及ぼす影響について説明します。 一般に喫煙者の末梢血では白血球数全般、特にリンパ球や顆粒球の数が多く、リンパ球の中でもヘルパー(CD4+)T細胞数が選択的に多いことが知られています。1日に吸うタバコの本数に応じてCD4+T細胞数が増加することも示唆されており、1日喫煙本数が20本未満の者では約1.2倍の増加であるのに対して、1日喫煙本数が20本以上になると約1.6倍まで増加します。このC D 4 + T 細胞はメモリー型のCD4+CD45RO+T細胞とナイーブ型のCD4+CD45RA+T細胞に分かれますが、両者共喫煙により増加します(図)。 ![]() しかし、メモリー型の方がより強い影響を受ける傾向があります。その他、NK細胞数は喫煙によって影響を受けないか低下するとされていますが、B細胞数は増加傾向にあります。 では、末梢血中で起こるこのような血液組成の変化は生体にどのような影響を及ぼすのでしょうか。タバコ煙に含まれる数多くの刺激物質への繰り返しのばく露は、気道及び血管内で炎症を誘導し、種々のサイトカインの分泌を高めると考えられます。一方、血管内皮細胞では粥状硬化斑の形成とともに、メモリーT細胞やマクロファージの浸潤が起こることが知られています。また、頚部エコーによる頚動脈の動脈硬化の程度と末梢血中メモリーT細胞数が正の相関を示し、特に喫煙者においてその傾向が顕著であるとの報告から、喫煙における末梢血中のCD4+CD45RO+T細胞数の増加は動脈硬化巣による炎症反応の亢進に寄与している可能性があります。このように喫煙は炎症反応を亢進し、動脈硬化の促進や心臓血管系疾患の発症・進展を起こすと考えられます。 |