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National Institute of Industrial Health

建設業従事者の死亡率追跡調査

企画調整部 久保田 均

現在、日本の建設業従事者はおよそ618万人と言われています。この数字は全就業者数の約1割にあたり、建設業は国民生活をはじめ日本経済の根幹を支える重要な業種であると言えます。

戦後、経済の復興と高度成長の中、日本中で建設ラッシュが続きました。その過程で、建設資材にも様々なものが活用されるようになり、取り扱いが容易で耐久性に優れた建材が多く開発されました。その代表的な建材の一つに石綿(アスベスト)を原料とするものがあります。かつて石綿は、その加工のし易さ、耐熱性、耐久性、耐腐食性、耐薬品性電気絶縁性から「奇跡の鉱物」とも称され、断熱材や摩擦材等と並んで建材にも大量に使われてきました。1990年代には、石綿消費量の9割以上が建材原料となっています。ところが、このような石綿の優れた物性とは裏腹に、既に20世紀前半には石綿肺と胸膜肥厚、そして後半には肺がん、悪性中皮腫など、人体への有害性が明らかにされていました。しかしながら、石綿建材を扱う建設業労働者の健康について、これまで国内では十分な調査研究が行われていないのが現状です。そこで、私たちは10年ほど前からある建設業従事者集団を対象に、疫学的調査を継続しています。

“疫学”とは、読んで字の如く、元来は疫病の流行に関して発病者の地理的分布や流行の時間的推移を検討し、疫病の発生要因を明らかにするために発達した学問です。しかし、時代の流れと共にその研究対象は感染症から非感染性慢性疾患(生活習慣病や各種難病等)や環境汚染、喫煙・飲酒習慣と疾病との因果関係解明など幅広い健康異常の問題へと広がり、更には私たちが行っているような労働衛生研究分野においても大変重要な学問となっています。

さて、前置きが長くなってしまいました。これまで私たちが行ってきた調査の結果、「鉄骨工」という職種において、肺がん死亡リスクが日本人全体よりも約3倍弱高いことがわかりました。当初、私たちは最も多くの石綿含有建材を扱う職種は「大工」、「左官」、「配管工」であると考えていました。であるのになぜ「鉄骨工」なのか?そこで、早速「鉄骨工」の作業内容を詳しく調べてみました。すると、鉄骨を扱う職種だけに溶接作業はもとより、やはり石綿含有建材も多く扱っていること、そしてまた、既存建造物の解体を行う機会の多いことがわかりました。今でこそ特に有害な石綿の使用は強く規制されていますが、古い建物の多くには大量の石綿含有建材が使用されており、それらの解体の際に、作業者には相当量の石綿ばく露が予想されます。

図には「鉄骨工」と平均的日本人との肺がん累積死亡確率を示します。この図からもわかるように、石綿による肺がん発症までにはある一定の潜伏期間があることから、今後は「鉄骨工」以外の職種においてもリスク上昇の可能性が十分にあることが予想されます。

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