独立行政法人産業安全研究所 と独立行政法人産業医学総合研究所は平成18年4月1日をもって統合し,独立行政法人労働安全衛生総合研究所となりました。
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独立行政法人 産業医学総合研究所
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National Institute of Industrial Health

コンピュータを使って
化学物質の毒性を予測する

作業環境計測研究部 猿渡 雄彦

猿渡 雄彦産業界・日常の生活の場では非常に多くの化学物質が使われていて、そして日々その数は加速度的に増えています。それらは全て人間に有害となる可能性がありますから、動物などを使った毒性試験が行われることが望ましいのですが、時間的・技術的・経済的理由により一部のものについてのみ行われているのが実情です。今までの毒性試験の結果をもとにして化学物質の構造式のみからコンピュータを用いて毒性を予測することが出来れば、安価で短時間に多種類の化学物質の毒性を評価することが出来るので世界的にその実現が期待されています。この研究は定量的構造活性相関法と呼ばれますが、広範囲な物質に適用できるものの実現は困難でした。

労働者が接触する可能性のある化学物質として現在約5万8千件が登録されています。そのうちの1万3千件については発がん性と密接な関係のある変異原性(遺伝子を傷つける能力)の試験が行われていますが、残り4万5千件については試験が行われていません。本研究は既に行われた1万3千件の結果をデータベース化し、それを学習データとして広範囲な未試験の物質の変異原性を予測する方法を開発しようとするものです。ひとつの化学構造式からトポロジカルパラメータ,熱力学的パラメータ,量子力学的パラメータなどの数百のパラメータを計算し、それを数千組集めたものを学習データとして、線型学習機械法と言う一種の多変量解析法を用いて予測モデルを作ります。本研究では80%から90%超の信頼性を持つ世界的に最高の予測システムが得られています。

化学構造式のみから毒性が予測できることは産業技術としても重要です。化学物質を合成しなくても毒性が評価出来るからです。これにより化学物質の開発のリスクとコストを大きく減少出来ます。危険な物質は開発しない→労働者にばく露しない→環境に放出しない、と言う状況が実現出来ます。コンピュータによる毒性の予測は単に労働衛生のみに留まらない重要なテーマです。

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