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National Institute of Industrial Health

典型的な産業中毒は既に過去のものなのか?
―産業中毒外来で経験した鉛作業中毒患者から―

有害性評価研究部 北村 文彦

作業条件適応研究部 高橋 正也鉛中毒は古くはヒポクラテスの時代から記載が存在する古典的な職業病です。しかし、現在では諸先輩方の努力により様々な対策がとられ、典型的な鉛中毒は教科書の上でのみのものになった観さえあります。特殊健康診断の結果においても、有所見率は1-2%位であり、新規の労災保険受給者は、最近では1999年に4例、2002年に2例といった状態になっています。

私は、平成13年8月に産医研に移ってきました。移動前の大学助手時代に荒記理事長が東京大学教授時代に労災病院で中毒外来を担当されていた時の外来助手を含めて、約6年間産業中毒の診療を担当してきました。当初の外来では鉛中毒患者は急性ばく露による一過性の高血中鉛の作業者と古くから通院していた中毒性の神経障害を持った老人の2名のみでした。しかし、昨年は、塩化ビニル製品製造作業において慢性ばく露(作業歴8-26年)の状態で血中鉛が高値(39-94μg/dl、基準値<20μg/dl)を呈する数名を新たに確認しました。それのみならず、初診時の血中鉛が99μg/dlで、その1-2ヶ月前には鉛疝痛を疑わせる腹痛を含む、全身痛があったバッテリー解体作業者にも遭遇しました。この人の作業期間は9ヶ月でした。さらに初診時の血中鉛が71μg/dlで、作業期間が1年7ヶ月の電気部品製造作業者(琺瑯化を担当)の例も外来で経験しました。

上記のほかに、20数年間、七宝焼きに従事し、最近2-3年外来通院中の人もいます。この人の初診時の血中鉛は44μg/dlでしたが、地元の医院を受診しておられて時には鉛疝痛を疑わせる腹痛が存在していましたし、しばらくして近医で測定された血中鉛は100μg/dl近いものでした。転院後キレート剤を用いて治療しましたが、ご本人の治療時の不快感の出現もあり、血中鉛が30μg/dlを切るのに実に2年間位かかりました。

上記に示したように、わが国において鉛中毒は決して過去のものではなく、油断はできないと強く感じています。また、典型的な産業中毒は、ほとんどの化学物質で目にする機会がなくなってきているのも事実ではあるでしょうが、決して産業中毒の存在を頭の中から消してはならないことを教示してくれた経験でもありました。

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