独立行政法人産業安全研究所 と独立行政法人産業医学総合研究所は平成18年4月1日をもって統合し,独立行政法人労働安全衛生総合研究所となりました。
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National Institute of Industrial Health

熱中症予防の研究をどう進めるか

国際研究交流情報センター長 澤田 晋一

寒暖計が30℃を超えればほとんどの人は暑いと感じ、暑さをしのぐために薄着になったり冷たい飲み物を飲んだり、近くに扇風機やエアコンがあればスイッチを入れるでしょう。仕事も普段より休憩を多くとってスローペースになるかもしれません。日常よくみられるこれらのありふれた一連の行動は、身体のオーバーヒート、いわゆる熱中症を防ぐために脳神経系が司る大変強力な、しかしとても複雑な情報処理過程です。その神経回路網のジグソーパズルを解くことは21世紀の神経科学の大きなトピックです。

ところで、そんな強力な「行動力」が人体に備わっていれば、いくら暑くなっても何の問題も起こらないはずです。ところが猛暑の夏には地域や学校はもちろん労働現場でも、いつも繰り返し熱中症が多発します。特に労働現場では近年夏季の屋外建設業を中心として熱中症による死亡災害が問題となっており、厚生労働省は第10次労働災害防止計画の中で熱中症の適切な予防対策の徹底を図るとしています。作業現場の発生事例を注意深く調べると、猛暑のため水分や休憩を十分摂ったりした「つもり」だったのに被災したケースが少なからずあります。

過度の暑さが人体に有害であり、熱中症を起こすことは明らかです。熱中症対策として水分補給や休憩をとることも今や周知の常識です。にもかかわらず、なぜ熱中症は繰り返し発生するのか、どうすれば予知予防できるのか。そんな疑問をいだきながら、夏季に建設工事現場や製鉄所などの暑熱作業の実態調査や人工気象室での暑熱ばく露の被験者実験を行っております。当面の課題は、(1)暑熱ストレス評価指標の有用性と限界、(2)市販されている防暑服の有効性、(3)中高年齢労働者の体温調節能力、(4)現場でも使える簡便な暑熱負担の評価法、(5)精神・身体作業能力に対する暑熱ストレスの影響、などの検討です。これらの研究を進めていくことにより作業現場で繰り返し発生する熱中症の予防につながる知識が一つでも二つでも得られれば、それは21世紀の作業温熱環境の労働衛生のささやかなトピックとなるはずです。

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猛暑の炎天下でも安全のため夏服軽装は許されない建築工事現場の作業風景
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