| 有機溶剤ガス吸着剤への応用に向けた 新規多孔性炭素材料の研究 人間工学特性研究部 安彦 泰進今日の作業環境では極めて多種類の有機溶剤がさまざまな目的に使用されています。有機溶剤ガスによる中毒から作業者を守るための呼吸保護具や排気設備には、一般に吸着剤として多く活性炭が利用されます。ここで、活性炭をはじめとする吸着剤の性能は、主にその細孔の発達状態に大きく影響されます。そのため、特に炭素材料中の細孔サイズを制御することには、吸着能力をさまざまに変えた吸着剤の開発につながるとの期待からこれまで関心が持たれてきましたが、任意の制御を実現することは依然として容易ではありません。しかしその中で、比較的原理が明瞭で効果の判りやすい方法に鋳型炭素化法による多孔性炭素材料の合成があります。従来の活性炭は殆どがあるサイズの細孔が集中的に発達したものとなっていますが、この方法では、活性炭とは異なる特徴的な細孔発達状態を持つ、多様な炭素材料を簡単な手順で得ることが出来ます。鋳型炭素化法による炭素材料合成方法を簡略にまとめると、多孔性の無機物質内に炭素原料を取り込ませて炭素化を行った後、無機物質を取り除き炭素材料を得る、となります。細孔の発達から見ると、図に示されるように、言わば鋳型の役割を果たす無機物質中の細孔分布状態が炭素材料に反映されることがこの方法の特徴です。ここで、無機物質を変えれば、同一の炭素原料でもいろいろな多孔性炭素材料を得ることが可能となります。これまでの研究の結果、この方法により得られる炭素材料の中には、単位重量あたりの吸着能力において、幾つかの有機溶剤ガスに対し、一般的な活性炭と比較して更に高い吸着量を持つものや、吸着速度において大きく上回るもの、また、ある種類の有機溶剤ガスについて選択的に高い吸着能力を示すものなどが見られました。現段階では実用に向けてまだ解決しなくてはならない課題がありますが、今後さらに詳しくこれらの材料について研究を進めていく予定です。 鋳型炭素化法による多孔性炭素材料合成の概略  |  | |