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National Institute of Industrial Health

肺組織中の石綿小体濃度による
石綿ばく露レベルの評価

前作業環境計測研究部長 神山 宣彦

2002年の中皮腫による年間死亡者は800人余りで、労災補償されたのは約80人に過ぎません。中皮腫の診断をしても石綿(アスベスト)ばく露との関連を想起しない主治医が多いようで、主治医がまず中皮腫と石綿ばく露の関連を疑わないことには石綿職業ばく露による中皮腫患者の労災補償は始まりません。臨床の先生方への期待は大きいのです。

しかし、主治医が石綿の関連を疑って本人あるいは家族に職歴や仕事の内容を問診しても、石綿との関連が全く分からないケースが急増しているのが現状です。そのため、厚生労働省は2003年に労災補償の認定基準を改定して、石綿ばく露の客観的な指標として、胸膜プラークの有無および肺組織中の石綿小体濃度からの判定が有効としました。後者の方法は、労働者の肺内に残された粉じんを光学顕微鏡や電子顕微鏡で調べて、どんな職場で働いたか、どんな働き方をしたか、職場以外でアルバイトをしたかなど、その労働者の粉じんばく露歴を読み取る方法です。筆者は、位相差顕微鏡を用いて400余の症例の石綿小体濃度を分析して、文献値も参考にして表1のような石綿ばく露レベルの評価基準をつくりました。なお、電子顕微鏡を併用するとさらに評価の精度が上がります。

わが国では今後2030〜2050年頃まで石綿肺がんや中皮腫が増え続けると推定さています。この方法で多くの労働者の石綿職業ばく露が判明して、労災認定が受けられるようになればと期待しています。

〔参考文献〕中皮腫における石綿曝露状況の分析法、病理と臨床、22巻、667-674頁(2004)。

表1 肺組織中の石綿小体濃度による石綿ばく露レベルの評価
肺組織中の石綿小体濃度
[石綿小体数/g(乾燥肺)]
石綿ばく露レベル
<1000 一般人住民レベル(職業ばく露の可能性は低い)
1000〜5000 職業ばく露の可能性が強く疑われるレベル
>5000 職業ばく露があったと推定できるレベル
image
肺組織内に見られた石綿小体
(褐色で鉄亜鈴の形をしたものが石綿小体)
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