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産業医学総合研究所におけるアスベスト関連研究
作業環境計測研究部 主任研究官 篠原也寸志,部長 森永謙二
産業医学総合研究所で行われてきた、アスベスト及び繊維状物質に関する研究は、分析的・実験的研究を中心に、繊維状エアロゾルの研究、疫学的研究まで含めると多岐にわたりますが、ここでは、微少試料中のアスベスト分析に基づく生体影響評価の研究、環境試料中のアスベスト分析に関連した研究に焦点を合わせて成果の一端を述べてみます。
国内のアスベストばく露状況を把握し、環境中の低濃度アスベストまでを検出・計測するには、分析電子顕微鏡による客観的データを提出することが重要でした。このために必要な分析試料作製法、計測手法の検討が進められました。ここで確立された方法を使い、生体内ばく露評価分析から、アスベスト種と発がん性の関係、量―反応関係が明らかとなり、クリソタイル(白石綿)単独ばく露による中皮腫症例の確認、クリソタイルの体内移動性、旧石綿鉱山付近の環境ばく露の状況なども明らかとなりました。また環境試料の分析結果から、道路沿い、アスベスト鉱山・工場、採石場周辺などでの、アスベスト濃度・分布状況が明らかとなりました。
アスベストその他の繊維状物質による有害性の程度を検証する細胞・動物試験も実施されました。有害性を説明する仮説として、細く長い繊維が体内に長く滞留すること、が提唱されていましたが、検証試験を行うために、繊維サイズを調製し、十分に性状評価されたアスベストその他の繊維状物質の標準試料が準備されました。様々な手段を用いた性状評価技術は、アスベスト含有物質の定量分析にも活用されました。ベビーパウダー中のアスベスト分析、蛇紋岩中のアスベスト定量分析法など、注目を集めた成果も多数あります。
以上の研究内容をまとめると、生体影響評価に関連する研究として、(1)中皮腫・肺がん症例の組織内アスベスト分析、(2)細胞・動物試験によるアスベスト物性と毒性、病理機序との関係究明、(3)細胞・動物試験に適した実験試料の作製、があります。環境試料中のアスベスト分析に関連する研究として、(1)一般環境を含む低濃度アスベスト評価手法の開発、(2)アスベスト計測用標準試料の作製、(3)アスベスト含有物質の分析と定量手法の開発、があります。これらの成果は、アスベスト性状の正確な記載の必要性を認識した神山・輿らの研究を中心に、研究所内外の医生物学系、理工学系研究者の理解と協力のもとに達成できたものといえます。この研究レベルを維持しながら、アスベスト関連研究を着実に前進させていくことが期待されていると思います。
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