バス内接着作業における
push−pull換気装置の研究
人間工学特性研究部 四本 久郎
観光バスでは、車内の天井、壁、窓枠にシートを張る作業が有ります。塗布ガンで接着剤を吹き付け、シートを張る作業の際に、高濃度の溶剤のミストや蒸気が発生して車内の作業環境を悪くしています。溶剤中にはトルエン、ノルマルヘキサン、アセトン等が含まれています。
作業者は、ガス用保護マスクを装着し、塗布作業に一人、シート張りに3人が従事していますが、マスク着用での作業は、作業性が悪く、夏場は保護マスク面と顔面の接触部に湿疹ができる人もいます。この様な作業環境を改善するために、過去において局所排気装置が設置された事も有りましたが、排気系のみであったので十分な効果が得られなかったという事です。
今回、現場作業者や技術担当者と作業工程等を検討した結果、push−pull式の換気方法が良策であろうとの結論が得られ、実車の1/2縮尺の縮小モデルを作製し、実験を行いました。 push−pullの設置方法は、装置図に示してある様に、最後部の窓面にプッシュ装置を設置し、最前部の窓面にプル用マルチスロットフードを設置しました。作業者が接着剤を天井に塗布する場合、プル側気流の上流側で作業を行いますが、最後部の窓付近で作業者は反転して塗布しなければなりません。この時、作業者は溶剤蒸気を吸引暴露する可能性が有りますので、最後部の天井面と他に800 mm置きの2個所に、幅200 mm、長さ1230 mm、厚さ5 mmのウレタンシートを張り、このウレタンシートに実際の接着剤中の溶剤トルエンより若干比重の重いキシレンを含侵させた場合と、比重が空気に近いメタノールを含侵させた場合とで、吹出し速度は1.5 m/sec、吸い込み速度は10 m/secの開口面速度で気流を発生させ、車内の溶剤の濃度分布を測定しました。濃度測定では、ウレタンシートに溶剤を十分に含ませ揮発濃度が安定している間(約8分)に給、排気ファンを運転し、各測定点の濃度を検知管で測定しました。測定開始と終了時に発生源の濃度を測定し、発生濃度に殆ど濃度差の無いことも確認しました。
各発生源でのキシレン濃度は約400 ppm、メタノールは1500 ppmであり、天井面に沿って、発生源から200 mm−400 mm離れるとキシレンでは、280 ppm−130 ppm、メタノールでは800 ppm−400 ppmと高濃度での濃度を維持しておりましたが、作業者の呼吸域では 吹出し気流の作用により、キシレンもメタノールも5 ppm以下の濃度となっていました。この実験中、気流の分布は排気側に向って平均して1 m/secでした。
本実験での濃度分布と速度分布の実験結果は、push−pull換気装置によるバス内塗布作業現場の環境改善の技術資料として有用であると考えます。
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