独立行政法人産業安全研究所 と独立行政法人産業医学総合研究所は平成18年4月1日をもって統合し,独立行政法人労働安全衛生総合研究所となりました。
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独立行政法人 産業医学総合研究所
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National Institute of Industrial Health

電磁場の健康影響

実験動物管理室   三枝順三

 現代の私たちの生活は電気なしにはまったく考えられません。家庭生活は電灯をはじめ、テレビ、洗濯機等種々の電気製品の恩恵を受けて成り立っています。また事務職場では各種OA機器に囲まれ、工場では電動機器が主役を担っています。その電気が人間の生命を脅かしているなんて考えられますか?
 事の発端は1979年に発表された“高圧送電線の近くで生活している家庭では小児白血病が多発している” という疫学調査の結果で、更に1990年には“高圧送電線の近くで生活していると脳腫瘍が多発する”との成績も報告され、その原因は送電に伴い発生する電磁場であるとされました。もしこの結果が事実であるならば電気の恩恵を享受して生活する事はいつもガン発生の危険にされされていることになり、一般市民はパニック状態に陥りました。特に電気事業に従事している労働者にとっては深刻な問題です。そこでヨーロッパやアメリカでは大々的に疫学調査や実験的研究がなされました。特にアメリカでは国立環境健康研究所を中心とした電磁場Electric and Magnetic Field(EMF)に関する調査・広報・普及(Research and Public Information Dissemination)計画(通称EMF-RAPID計画)が1992年に発足し、疫学調査や基礎的研究を精力的に推進・援助し、得られた成果を公開しています。電磁場暴露と小児白血病や脳腫瘍の発生との相関を是とする報告と非とする報告が相半ばしていましたが、アメリカ国立癌研究所は大規模かつ詳細な調査を行い、“小児白血病と電磁場暴露とに相関を認めない”という結論を1997年に発表しました。疫学調査に並行して細胞や動物を用いて実験的に電磁場の生体影響が世界中の研究所で検索されています。マウスやラットを用いて安全性試験では白血病発生が促進されたという報告とまったく促進作用が無かったとの報告が錯綜し、電磁場の生体影響評価は未だに混乱しています。EMF-RAPID計画では専門家による評価委員会を招集し電磁場暴露の生体影響に関する論文を詳細に検討した結果、本年6月に“電磁場とガンの関係は薄い”との見解を発表しています。しかし、ガンとの関係をまったく否定したわけではなく研究の続行を求めています。
 我国においては電磁場の健康影響が巷間で話題になったのは西欧諸国より遅れましたが、実際にはEMF-RAPID計画が発足した1992年頃から厚生省、通産省、郵政省、労働省、環境庁が独自に調査・研究を開始しました。1997年には省庁間連絡会議を招集し相互の情報交換を円滑に行うようになり現在に至っています。労働省では電磁場暴露に関する調査研究委員会を招集し国際的な研究趨勢の把握に努めています。また、本研究所では高磁場が発生すると予想される職場の暴露実態調査を実施するとともに、実験動物を高磁場に長時間暴露し電磁場の発ガン促進効果の有無を検討しています。幸いに動物実験では現時点までには発ガン促進効果を示唆するような成績はありませんが、まったく影響が無いことを証明するまでは更なる研究が必要です。

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