電磁場の生体影響
城内 博
電磁場はX線、紫外線、可視光線、赤外線、マイクロ波、ラジオ波、低周波、超低周波など、その周波数帯によっていろいろな呼び方があります。そしてその生体影響も周波数によって異なります。X線やある種の紫外線に発癌性がある事は周知の通りです。その他の電磁場ではそのエネルギーが大きいと発熱作用や生体内に誘起される電流による刺激作用などがあります。しかしこのような生体作用が一般環境で起こる事はめったにありません。
現在、いくつかの国あるいは国際的機関が人々の健康を守る観点から、各々の周波数帯の電磁場に対してそれぞれ防護指針を出しています。日本の郵政省も「電波防護指針」を出しました。これらの電磁場の防護指針における設定値は、おもに電磁場の発熱作用あるいは電流刺激作用を考慮して決められています。つまり安全対策のような考え方です。ところが近年、電波や超低周波電磁場が癌などの病気の原因になりうる可能性を示唆した研究結果がいくつか発表され、従来の防護指針の根拠に一石を投じました。これは高圧送電線下では小児白血病が多く発生したというアメリカの疫学的調査に端を発しています。これらの疫学調査で問題にしている超低周波の磁場強度は、防護指針で定められている値の500倍にもなります。つまり電磁場により癌などの病気が起こるとすれば、従来の防護指針を考え直さなくてはならなくなります。ところが、多くの研究が成されてきたにもかかわらず電磁場がこのような病気の原因となりうるかどうかについてはいまだ不明です。ただ電磁場が病気の原因になりうるとしてもそのリスクは非常に小さいものであろうと言われています。とにかく現在の防護指針をどのように捉えて発展させていくかは、今後の研究結果と社会的な同意(利便性とリスクに対する考え方の歩み寄り)に依っています。
電磁場の生体影響に関する社会的な関心も次第に大きくなって来ました。このような状況で各省庁が電磁場の生体影響の解明に向けてさまざまなプロジェクトを発足させました。労働省産業医学総合研究所でも電磁場に関する研究を行っています。今後は超低周波磁場を動物に曝露して、その影響を観察する実験を計画しています。5年後ぐらいにはさまざまな研究の成果が得られ、電磁場の生体影響や対策に対する考え方が更に明確になることを期待しています。
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