| 1. |
患者は、テレビなどに使われる押しボタン式スイッチの組立工程で発生していた。組立ラインは 7本あり、1本のラインは、1台の局所排気フード付き浸漬槽と3-4台の自動組立機で構成されていた。槽内の浸漬液の組成は、2-ブロモプロパン(別名イソプロピルブロマイド)97.4%、n-ヘプタン0.3%、1、2-ジブロモプロパン0.2%、他に1、1、1-トリクロロエタン、トルエンなど
5種類が各0.5%以内であった。浸漬液には0.03重量%程度のポリテトラフルオロエチレンが混ぜられていた。スイッチ部品は、浸漬槽に数秒間漬けられ、脱脂洗浄ならびに樹脂と端子の隙間のポリテトラフルオロエチレンによる充填がなされていた。この充填は、後のハンダ付け工程で鉛ヒュームやフラックスが、接点部分ににじむのを防ぐためであった。浸漬後、部品は自動組立されていた。勤務は12時間
2交代であった。 |
| 2. |
調査時には作業は既に中止されていたため、模擬作業をして作業場内14ヵ所で測った気中2-ブロモプロパン濃度は、9.2-19.6ppmであった。トラブル時にのぞく局排フード内、浸漬液表面から
1m上では、2-ブロモプロパン4141ppm、n-ヘプタン30ppmであった。この職場では、2台の浸漬槽の局所排気装置が94年11月末まで3.5-6ヵ月間、未設置であり、また94年11月から95年
7月まで、浸漬液自動注入装置がなく、手作業で液の供給、混合をしていたため、高濃度曝露もあったと推定された。 |
| 3. |
女性作業者25人中、16人に月経停止、うち 8人は汎血球減少(赤血球、白血球、血小板がともに減少した状態)も併発していた。男性作業者
8名中、 2人は無精子、4人は精子減少。うち 1人は汎血球減少も併発していた。臨床検査結果と症状から、標的臓器は卵巣、精巣の生殖細胞、骨髄と考えられた。 |
| 4. |
自覚症は、女性では頭痛、めまい、脱力感などが多く、2名に打撲で皮下出血をしやすいとの訴え。男性では頭痛やめまいの訴えがあった。 |
| 5. |
同工程では、94年 2月に、1、1、2−トリクロロ-1、2、2-トリフルオロエタンが、オゾン層保護のために使用中止となり、前記の2-ブロモプロパンを主成分とする溶剤に代替されていた。代替品は日本からの輸入品であった。 |
| 6. |
代替の後に、月経停止が生じた。 |
| 7. |
ベンゼン、セロソルブなど強い造血器毒性や生殖器毒性が既に知られている物質の使用はなし。 |
| 8. |
同一建物内の2-ブロモプロパンに曝露されない工程の作業者(男12人、女65人)では、同様な健康障害はない。 |