IT化の光と影の狭間で最適解を探る
作業条件適応研究部 毛利一平
企画調整部 斉藤進、外山みどり
人間工学特性研究部 岩切一幸
情報技術(IT)の進歩は私たちの働き方を大きく変えつつあります。
顧客先へは直行直帰、会社からの指示を手持ちのパソコンで受け取り、資料は会社のサーバにアクセスして取り寄せ、プロジェクターを使ってプレゼンテーション。たまには出社しますが、かつての狭くて雑然としたオフィスはなくなり、今は必要最低限のいすと机が機能的に配置され、その日出社した社員だけがおもいおもいの場所で自分のノートパソコンのキーをたたいています。机やいすのデザインも人間工学を考慮し、見た目も機能も優れたものに置き換えられました。誰もが「こんなところで働いてみたい」と思うような、そんな職場に見えます。
ここに興味深いデータがあります。あるIT関連企業で外回り中心に仕事をするシステムエンジニア(SE)と、社内での仕事が中心のSEの「燃え尽き度」の比較です(図)。前者は上に紹介したような職場で、「自由席(フリーアドレス)」と呼ばれます。後者は従来の職場ですが、前者との対比で「固定席」と呼びましょう。図からは明らかに「自由席」で働く労働者で燃え尽き度が高いことがわかります。図には1980年代半ばの医療従事者の燃え尽き度も示していますが、それと比較してもSEの燃え尽き度が高いことがわかります。一見効率的で華やかに見える現代的な職場にも、問題は潜んでいるのです。
図では二つの職場の違いを「自由席」と「固定席」の違いとして示していますが、もちろん「自由席」を「固定席」に替えることで燃え尽き度が改善するわけではありません。「自由席」導入の動機としては経費の節減が大きいのですが、それを実現するためには成果主義の導入やモバイル環境の整備など、多くの労働者にとって強いストレスの原因となる要素が含まれています。一方、「自由席」システムの導入は什器の選択肢を広げ、従来のオフィスの人間工学的な課題を解決するチャンスにもなります。
IT化に伴う光と影、その狭間で最適解を探る試みを、私たちはプロジェクト研究「情報化職場の快適化に関わる労働衛生上の要件に関する研究」で2003年度も続けます。
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