独立行政法人産業安全研究所 と独立行政法人産業医学総合研究所は平成18年4月1日をもって統合し,独立行政法人労働安全衛生総合研究所となりました。
このページは,(旧)独立行政法人産業医学総合研究所のコンテンツです。(平成17年度までの事業関連等,一部統合後に更新されたものも含みます。平成18年10月2日をもって,このページの更新は終了しています。)
独立行政法人 産業医学総合研究所
ホームページに戻る
戻る
National Institute of Industrial Health

寒冷環境下での労働

澤田 晋一

 冬季における農林水産業や土木建設業などの屋外作業はすべて寒冷環境下での労働といえますが、最近では食品低温流通機構の発展によって生鮮食料品や冷凍食品取扱業あるいは冷凍・冷蔵倉庫業のような年間を通して常時氷点下の人工的寒冷作業環境も増えています。このような寒冷環境下で働く人々の間に、凍傷・低体温症だけでなく筋・骨格系、呼吸・循環器系、神経系疾患など種々の健康障害が報告されており、これらの寒冷障害を防止して安全で快適な寒冷作業条件を確保するための作業管理手法の開発が急務となっております。このような状況の下で、最近になってアメリカの政府関係産業衛生士会議(ACGIH)やヨーロッパの国際標準化機構(ISO)に続いて、日本の産業衛生学会でも寒冷作業の許容基準を勧告しておりますが、これは主として欧米の基準を基礎に作られたものであるため、その妥当性の検討がもとめられております。人種的特性、気候風土、生活習慣などの異なる日本の作業者に対して欧米の基準をそのまま適用することは出来ない可能性があるからです。そこで私どもは、現行の寒冷作業基準の妥当性を検討するために、研究所内に設置されている人工環境室(写真参照)で人工的に寒冷作業環境条件を作り、現行基準の範囲内で被験者の方々にその中に滞在してもらい、寒冷ストレスの生理的・心理的影響や身体的・精神的作業負担などを労働生理学的観点から総合的に調べております。現在検討しているのは現行基準にある身体冷却許容限界の生理的クライテリアの妥当性です。 ACGIHや日本産業衛生学会では直腸温などの深部体温36℃、ISOでは体表面の平均皮膚温30℃を身体冷却の許容限界値として採用しており、身体冷却がこれ以下にならないように作業時間制限や防寒服の着用が勧告されています。これまでの実験から、これらのクライテリアでは日本の若年成人男性では生理的にも心理的にも負担が大きく、また寒冷暴露を繰り返すと、その間に温暖条件をはさんでも深部体温が低下し続ける場合があること、などが示唆されました。今後は、日本人向けにより信頼性の高い寒冷作業管理手法を開発するための基礎研究として、繰り返し寒冷暴露した時の作業負担の解析、作業−休憩サイクルのありかたの検討、寒冷適応能力の検査法の開発、防寒服の保温力評価の標準化などに取り組む必要があると考えております。

copyright(c).National Institute of Industrial Health page top