建設業従事者の筋骨格系障害の現場調査
作業条件適応研究部 上野 哲
平成10年度において、4日以上の業務上疾病で休んだ人は8574人いました。災害性腰痛は4896人で、全体の約六割を占めています。業種別では、運輸交通業、商業・金融・広告業、建設業に腰痛になる人が多くいます。この中で、建設業は小規模事業所が多いことが特徴です。平成11年度の統計では、従業員数10人以下が多く、全体の事業所数の3/4以上を占め、人数では建設業に従事する508万人の労働者の1/3以上を占めています。このような小規模事業所には、産業医や衛生管理者はいなくて、労働安全衛生管理は個人に任される傾向にあります。これが、業務上疾病数の減少が頭打ちになっている原因の一つと考えられ、その対策の遅れが指摘されています。そこで、町場の建設業従事者を対象に、筋骨格系障害の実体を把握するため、調査を行いました。
M県建設業国民健康保険組合が実施した健康診断の際に行った、自記式アンケート票3557人分の腰、腕・手、肩の痛みに関する回答を解析しました。痛みの程度は、ひどい痛み、軽い痛み、痛みなしの三つに分けて回答してもらいました。部位別に見ると、腰の有訴率が腕・手、肩に対して高い値を示しました。年齢、職種、飲酒や喫煙と筋骨格系障害との関係を多重ロジスティック回帰解析で調べました。(1)年齢の影響:腕、肩、腰の3箇所の痛みすべてについて、有意に影響がありました。ひどい痛みを感じる人は、年齢が高くなるにつれて多くなりました。(2)職種の影響:作業内容が重い大工などの職種では痛みの訴えが多く、作業内容が軽い設計管理工や電気工では有意に有訴率が低下しました。(3)飲酒の影響:影響はほとんど見られませんでした。(4)喫煙の影響:軽い痛みには影響がありませんでしたが、ひどい腰痛の場合に、吸う本数が多くなるほど痛みを訴える人が多くなりました。腰痛と喫煙との関係を示す論文は多くあり、喫煙により血管が収縮し、血流量が低下する影響が腰痛の原因と考える人がいますが、まだはっきりとした答えはありません。日常の作業状況では、不良姿勢(89%)、重量物の持ち上げ(87%)、狭い場所の作業(79%)が適当でないと答えた人が多くいました。本研究は、久永部長、城内主任研究員との共同研究です。
その他に、筋肉の生理学的研究を行っています。疫学調査において、肉体労働者に筋骨格系障害が多かったことから、無酸素状態や低温条件下における筋肉の特性を哺乳類の筋肉線維を使って実験しています。
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