独立行政法人産業安全研究所 と独立行政法人産業医学総合研究所は平成18年4月1日をもって統合し,独立行政法人労働安全衛生総合研究所となりました。
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独立行政法人 産業医学総合研究所
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National Institute of Industrial Health

免疫指標からの健康影響評価

有害性評価研究部  安田彰典

 慢性疲労や過重労働、強い精神的なストレスにより体の免疫機能が影響を受け感染症などに罹りやすくなるということが一般的に知られています。そこで免疫系の細胞を調べることにより、労働要因に起因するところの現在受けている健康影響、特に蓄積されつつある疲労やストレスの度合が測れないだろうか?という観点から長時間労働・交替制勤務の現場で調査を行ってまいりました。
 免疫機能の検査として、比較的簡便に調べることのできるリンパ球表面抗原の解析を行います。検診時に調べる候補としてまず挙げられるのはT細胞の表面抗原であるCD4、CD8ですが、これらは文献的にも経験的にも疲労やストレスとはほとんど関連しません。次に挙げられるのはNK細胞で、文献的にも急性ストレスが与えられると抹消血液中の数が増加しその活性も上昇、また慢性ストレスを受けたときに数は減少しその活性も低下するということが知られております。NK細胞というのは、ウイルス感染の初期防御や腫瘍免疫に重要な役割を担っている細胞です。NK細胞に表現されるCD抗原は、CD16、CD56、CD57等ありますが、なかでもCD56はその90%以上がNK細胞であるということから単独でもNK細胞のマーカーとして有用と考えられます。
 これまでの長時間労働現場での調査において、CD56細胞の割合は週労働時間・睡眠時間・喫煙習慣・自覚症状と有意な関連があるという結果が得られております。週労働時間では、長時間群は短時間群に比べ低値であり、また睡眠時間でも、6時間未満の睡眠時間の群はそれ以外の群より低値でした。喫煙群は非喫煙群より低値であり、喫煙本数が増えるほど低値になる傾向が認められます。自覚症状の中で関連があった項目は、いらいらする、よく眠れない、カゼをひきやすい等で、訴え率の頻度の多さとCD56細胞の割合の低さが有意に関連していました。また、交替制勤務の現場調査ではストレスを普段感じるかどうかという質問においても同様な傾向が認められました(図)。
 以上のことから、NK細胞の表面抗原であるCD56は長時間労働や睡眠不足・喫煙などの生活習慣と深い関連があり、また風邪をひきやすい・イライラする等の免疫機能の低下を示唆する自覚症状ともよく相関します。したがって、CD56の値を検査することで、労働現場での健康影響を客観的に評価、チェックすることが可能であり、また簡便な方法であると思われます。

図:ストレス感

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