独立行政法人産業安全研究所 と独立行政法人産業医学総合研究所は平成18年4月1日をもって統合し,独立行政法人労働安全衛生総合研究所となりました。
このページは,(旧)独立行政法人産業医学総合研究所のコンテンツです。(平成17年度までの事業関連等,一部統合後に更新されたものも含みます。平成18年10月2日をもって,このページの更新は終了しています。)
独立行政法人 産業医学総合研究所
ホームページに戻る
戻る
National Institute of Industrial Health

メタロチオネインってなに?

健康障害予防研究部    小滝規子

 ヒトが生きていく上に不可欠な元素を必須元素と言います。その中に鉄、亜鉛、銅、コバルト、クロム、ヨウ素などの微量必須金属があり、私たちはこれらを食物から取っています。しかし食物中にいつも有益なものだけがあるとは限りません。例えば亜鉛には、性質が似ている兄弟分のようなカドミウム(Cd)が、極々微量ですが混じっています。ですから齢を重ねるにつれ、Cdは体内に、特に腎臓に溜まっていきます。このCdを結合しているのがメタロチオネインMetallothionein(MT)です。MT自体はウマの腎臓からCdを多く結合しているタンパク質として約40年前にデビューしました。金属(メタル)をチオール基(チオ)を介して結合しているタンパク質(protein)ということでメタロ-チオ-ネインと呼ばれています。
 産医研では、以前から金属のヒトへの影響について研究が行われていました。その中で故吉川博士のグループは、金属による毒性が少量の金属の前投与によって抑制される場合があることを動物実験で見つけました。生体が金属毒性に対して「耐性」を獲得するという、この研究成果は毒性学の分野では画期的なことでした。これも主役はMTだったのです。種々の動物の臓器から得たMTのアミノ酸配列が分析され、チオール基が非常に多く、その配置に種間で共通性があり、芳香族アミノ酸がなく、分子量が小さい(約6500)のに金属を1分子に7個も結合できるなど一般のタンパク質とは異なった、かなりユニークなものでした(図参照)。MTが必須金属の代謝調節に関与し、金属を結合するだけでなく、金属によっても体内に誘導合成されること、ビタミン、ホルモンといったような生理活性物質やある種の薬剤、ストレス、紫外線などの外的条件によっても主に肝臓で増えることなどが次々に明らかになり、一種の生体防御タンパクと考えられています。
 「産医研ニュース」創刊号の本欄記載「繊維状鉱物による肺の障害」(京野)の方法でクリソタイルのラット気管内投与実験を行いました。その結果、肺のMTレベルが一過性に上昇していたことが判りました。これまでのMTに関する研究では繊維状鉱物による実験例は見られませんでした。
 MTがCdを結合して毒性を抑えるからといって、曝露しても大丈夫ということでは決してありません。MTの合成量におのずと限界があるからです。Cdに限らず、いまは無害とされている化学物質でもそれらを取扱う場合には、出来うる限り曝露を少なくするような措置を講ずるのは必要なことでしょう。

copyright(c).National Institute of Industrial Health page top