独立行政法人産業安全研究所 と独立行政法人産業医学総合研究所は平成18年4月1日をもって統合し,独立行政法人労働安全衛生総合研究所となりました。
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National Institute of Industrial Health

内分泌かく乱作用と次世代神経行動影響

企画調整部 宮川宗之

 体内では様々な種類のホルモンが分泌され、生体の諸機能が適切に働くように情報を伝達する信号として働いています。化学物質の中には、このホルモンによる体内の信号伝達・機能調節ネットワーク(内分泌系)の働きを乱す可能性を示すものがあり、内分泌かく乱物質(いわゆる環境ホルモン)として問題とされています。野生生物やヒトの生殖に影響があるのでは、すでに精子減少などの影響が出ているのでは、といった懸念が示されています。
 ところで、生殖への影響には次世代への影響も含まれます。もしも、親の生殖細胞(精子・卵子)や胚・胎児が内分泌かく乱物質にばく露されることで、子の発達や行動に影響が及ぶとすれば重大な問題でしょう。性的機能の成熟や行動面での性差発現には性ホルモン様作用が疑われる物質が影響するかもしれませんし、胎生期における神経系の発生過程で重要な役割を果たす甲状腺ホルモンに影響が及べば、神経系諸機能や行動への悪影響が懸念されます。自己の行動を適切に制御する能力や、記憶や学習といった認知機能への影響が心配されるのであれば、このような有害性を適切に評価することが大切です。しかし、例えばPCB類の場合でも、このような影響についての実験的研究は十分ではなく、評価手法の確立を含め、さらなる研究が必要な状況です。
 私たちのグループでは、「内分泌かく乱作用が疑われる化学物質の生殖系・次世代への影響評価に関する研究」という課題名で、平成13年度に競争的資金によるプロジェクト研究を開始しました。ビスフェノールA、PCB、フタル酸ジエチルヘキシル等を対象にした次世代発達神経行動影響についての実験的研究です。産業中毒学では、有機溶剤や鉛などの中枢神経毒性が重要な研究対象となっており、私たちもトルエンの毒性を脳内活性物質やラットの行動変化を指標に評価する研究を行ってきました。また、基盤的研究として、神経系高次機能(学習・記憶)への影響を、実験動物の行動を指標に評価する方法についても検討し、オペラント条件づけによる行動分析が有効との結果を得ております。これらの成果を背景に、このプロジェクト研究では、妊娠ラットに対象物質を投与後、仔ラットについて、性ホルモン・甲状腺ホルモン・神経伝達物質の変化を生化学的・内分泌学的・分子生物学的手法によって測定するとともに、成長後の仔ラットの学習習得過程や短期記憶過程に及ぼされる影響を、オペラント条件づけを用いて調べています。現在、初年度に行なったビスフェノールA投与による測定結果の取りまとめ中ですが、議論の多いこの分野で、少しでも科学的証拠の蓄積に貢献すべく努力したいと考えております。

写真:オペラント条件づけ測定中のラット 写真はオペラント条件づけ測定中のラット

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