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独立行政法人 産業医学総合研究所
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National Institute of Industrial Health

労働環境における全身振動ばく露
生体影響に関する研究

人間工学特性研究部  前田節雄

 労働環境における全身振動ばく露とは、乗用車、長距離トラック、建設機械、産業機械、農業機械、鉄道等の座席から伝達する振動に運転手が曝されることをいいます。そして、災害性の原因によらない腰痛は、比較的短時間の労働で発症する腰痛として、腰部に著しく粗大な振動を受ける作業を継続して行う業務により発症すると考えられています。我が国におきましては、平成6年9月6日に基発第547号の職場における腰痛予防対策指針において、長時間の車両運転等の作業に対して、腰痛予防の為の考え方を示してきていますが、具体的な労働環境における全身振動ばく露の数値ガイドラインは定められていませんでした。
 国際的な動きのなかで、ドイツでは、1994年に全身振動に伴う脊柱障害許容基準のガイドライン(1日8時間等価振動を0.6ms-2rms:周波数補正振動加速度実効値)が法律で制定されてきています。英国では、ISO2631-1(1997)(全身振動ばく露測定規格)に基づいた全国的な振動ばく露実態と全身振動障害の関係を明らかにする調査研究が1997年から実施されてきています。ISO2631-1の国際規格では、1日8時間等価振動を0.5ms-2rms、ヨーロッパのEU Directive(欧州機械指令)では対策を考えなければならない基準(Action Level)として1日8時間等価振動を0.6ms-2rms、VDV(四乗ばく露量)値では11ms-1.75の数値目標を定め、労働現場の労働者を職業性振動障害から守ることを積極的に進めてきています。
 我が国では、1979年に制定されたISO2631を基に、日本産業衛生学会において全身振動の許容基準が1983年に制定されましたが、1997年に全身振動ばく露の測定評価規格ISO2631-1が改定発行されたことにより、日本産業衛生学会の全身振動の許容基準も見直しの時期になってきております。しかし、改定されたISO2631-1の方法による我が国のばく露実態と腰痛等の関係は明らかではありません。労働現場での全身振動ばく露実態と腰痛の実態を調べ、許容基準を考える研究は国内では行われていませんし、また、全身振動ばく露を軽減する為の対策の研究も殆ど行われていません。従いまして「負傷によらない業務上の腰痛」の中の長時間運転作業による腰痛問題を明らかにし、労働環境での腰痛予防のための全身振動ばく露ガイドライン、人の生理・心理影響に基づいた対策指針および防止対策を策定することは労働衛生上必要な緊急の課題であると思われます。
 そこで、人間工学特性研究部では、労働環境での腰痛予防のための我が国の全身振動暴露ガイドラインを設定するとともに、日本国民を全身振動暴露による腰痛から守るために、国際規格の全身振動ばく露影響評価に我が国の基準を提案することを目的とした研究に平成14年4月から着手することになりました。平成14年度には、作業者が全身振動ばく露を受けると思われる乗用車、長距離トラック、建設機械、産業機械、農業機械、鉄道等の座席の振動ばく露実態を国際規格ISO2631-1に準拠した装置で測定・評価し腰痛等との関係を明らかにし各国の基準と比較検討する予定です。この研究の推進に対し皆様方のご協力がいただければ幸いです。

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