独立行政法人産業安全研究所 と独立行政法人産業医学総合研究所は平成18年4月1日をもって統合し,独立行政法人労働安全衛生総合研究所となりました。
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独立行政法人 産業医学総合研究所
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National Institute of Industrial Health

作業関連疾患の疫学

作業条件適応研究部 毛利一平

有害性評価研究部 平田衛

ほとんどの病気はさまざまな原因の組み合わせによって起こると聞けば、今では多くの人が「なるほど」と納得するでしょう。しかし、「一つの病気にはただ一つの原因」という単純な考え方は、ずいぶん最近まで非常に大きな影響力を持っており、今でもその名残りをあちこちで見聞きします。
労働衛生の世界で、「職業病」が「作業関連疾患」に取って代わられるようになったのは、10年ほど前のことでした。労働衛生の主な関心が、それまでのじん肺や化学物質による中毒、振動病など労働との関連が明確な疾患から、循環器疾患や筋骨格系疾患など生活習慣とも関連が深い疾患へと変わってきたのです。これは主に産業構造の変化や、製造業における有害物質へのばく露低減策の効果と見てよいでしょう。
労働衛生の課題も、労働の場から危険で有害な要因を「取り除く(あるいはその基準値を守る)」ことから、「より健康で快適な職場(作業環境・作業条件)づくり」へと移り変わったような気がします。そこには疫学研究によって作業関連疾患の「作業関連性」を明らかにし、職場に広がるさまざまなリスク要因に目を凝らしてゆこうという意気込みを読み取ることができました。しかし残念ながら、日本におけるその後の労働衛生研究の動向は首を傾げざるを得ないものでした。学会や学術雑誌などどこを見回しても、「より健康な職場づくり」よりも「職場での健康づくり」の話題が盛んです。もはや作業条件も作業環境も改善し尽くされたかのような錯覚に陥りそうですが、実際にはいまだ解決しきれない古典的な問題や、状況の変化の中で息を吹き返した問題、技術の発展の中で新たに生まれた課題などが数多くあるのではないでしょうか。
当研究所では、2003年度より3年間の計画で「作業関連疾患の疫学的研究」に取り組みます。非常に漠然としたテーマですが、要はさまざまな労働者集団を対象として、循環器疾患などいくつかの疾病の作業関連性を疫学的に明らかにしてゆくことにあります。すでに運輸、化学、建設などの分野を対象とした追跡調査の下準備を行っています。また、日本において労働衛生分野の疫学研究がなかなか進まないことの原因として、疫学研究を支援する基盤が確立されていないことがあるとの認識に立って、作業関連疾患サーベイランスシステムの開発や、ばく露評価のツールとしての職務−ばく露マトリックスの開発等も視野に入れ、所外の方々の幅広い参加と協力を得ながらプロジェクトを進めてゆきたいと考えています。
いまや何をするにも確かな根拠(エビデンス)が必要とされる時代です。このプロジェクトから日本の労働衛生行政の推進に役立つエビデンスを、一つでも多く発信できればと考えています。

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