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National Institute of Industrial Health

繊維長が異なるクリソタイル繊維の急性肺障害

実験動物管理室 戸谷忠雄

 現在、アスベストの一種であるクリソタイルは、建築材や絶縁材等に使用され私達の生活環境を支えています。しかし、アスベスト粉塵によるアスベスト関連疾患が大きな社会問題となり現在でも危惧されています。
 クリソタイルは非常に細い柔軟性に富む中空管状の天然鉱物繊維です。繊維状物質の物性因子としては、表面形状や結晶構造、化学組成などがありますが、これらの性状は消費環境によって変化します。例えば、自動車用ブレーキ材などは高温や摩擦等に晒され物理的に変化して発塵すると考えられます。
 繊維の物性因子と生体影響の関連性についてはまだ不明な点が多いようです。今回、これら物性因子のうち繊維長だけが異なるクリソタイルを、ラット気管内に1回投与し肺の急性影響を比較しました。
 使用したクリソタイル試料は、繊維長が異なる2種類の山部産クリソタイルとUICC-Bクリソタイルから分級した2種類です。山部産クリソタイルは、大部分が長さ1μm以下の短繊維(Y-H)と長繊維(Y-A)、UICC-Bクリソタイルは分級した短繊維(S)と中繊維(M)で、繊維長の順に示すとY-H<S<M<Y-Aです。
 気管支肺胞洗浄の結果、投与初期にはどの繊維でも肺胞内に白血球の増加を来し、Y-Hでは好中球、S、M、Y-Aでは好中球と好酸球を主とした各種炎症細胞でした。好酸球は、ある長さ以上の繊維で観察されることから繊維長の関与が示唆されました。一方、肺胞マクロファージは長繊維ほど障害性が強く且つ持続していました。
 次に肺の組織を比較すると、Y-Hは投与直後に炎症が観察されましたが、1週間程度で完治し線維化は認められませんでした。S、Mでも初期に炎症が惹起されましたが、Sでは次第に沈静化しほぼ回復、Mでは炎症の持続と肉芽腫形成、その後線維化に進みました。Y-Aでは末梢気管支の上皮剥離を伴う炎症や肉芽組織による閉塞等強い変化を示し、線維化へと進展しました(写真参照)。病変の強さはY-H<S<M<Y-Aの順で、長繊維ほど炎症や線維化が強く認められました。
 今回使用したクリソタイルには、10μm以上の長い繊維がY-H、S、M、Y-A にそれぞれ0%、4%、20%、>20% 含まれています。急性肺障害の強さはこれら長繊維の含有率とよく相関し、繊維長に依存して強くなるという量―反応関係を示しました。
 繊維サイズが発ガン性に対し重要な要因であることがStantonやPottらの動物実験によって明らかにされていますが、今回の急性肺障害にも繊維長が関係していることが分かりました。繊維状粉塵の有害性評価は、物質の詳細なキャラクタリーゼイションと生体影響の両面から可能になると考えられます。

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