繊維状鉱物による肺の障害
有害性評価研究部 京野 洋子
アスベストや代替鉱物繊維の生体影響リスクを簡便に評価するために、in vitro 試験によるスクリーニングが推奨されています。けれども複雑な機能恒常性維持のしくみを持つ生体での影響は単純ではありません。そこで吸入法より簡便な気管内注入法により、鉱物繊維の毒性比較を動物で短期に行う方法の開発を目的としました。この方法は発癌や線維化までは確認出来ませんが、最近は呼吸器疾患分野で分子生物学的情報が急速に解明されて、急性炎症の成立と、それが発癌や線維化にどう結びつくのか間もなく推定可能となるでしょう。
当研究所では幾つかのアスベスト代替鉱物繊維について、1)肺での重要な防御機構を担うマクロファージに対する影響、急性炎症の発生と関係する炎症指標の生化学検査を、気管支肺胞洗滌液を用いた細胞分類と肺組織病理検査と平行して行い、投与後1週間以内に影響を比較し、毒性の強いものを選択したいと計画しています。
1)TiO2-whisker(TO1)=(日本繊維状物質研究協議会=JFM標準繊維状試料rutile whisker)、2)これと同一の化学組成、結晶形で非繊維状のTiO2(TOP)、3)陽性対照繊維としてUICC-Amosite(Ams)の評価をしました。投与量を1.0 mg以下の低濃度で比較した結果以下の重要な点が分かりました。
1)気管支肺胞域を洗浄して得た細胞は、正常では肺マクロファージが98%以上ですが、繊維状のTO1とAmsでは多量の炎症細胞が現れました。また喘息患者の気管支肺胞洗浄液に多く現れる、好酸球がラットでも増加しました。じん肺を起こす石英粒子や、非繊維状のTOPを注入しても好酸球は増加しないので、表面結晶構造と、化学組成まで同一でも、形状が繊維であるTO1が強い急性肺障害を起こしたのは興味あることです。
また肺組織の検査では、TO1とAmsの繊維沈着と一致して炎症性の細胞が多量に、気道の周囲に現れ、気道では粘液を産生する細胞が著しく増加しました。一方TOP群では粒子の沈着状況はTO1と同様でしたが、ほとんど変化は起こりませんでした。このように低濃度範囲の気管内注入で、急性肺病変の程度に量―影響関係が成り立ち、より現実的な評価が出来たので、ある程度危険度が高い物質について、その使用や現場での取り扱いに迅速な情報を提供することが可能となるでしょう。
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