職場における心身の健康度
作業条件適応研究部 佐々木 毅
職場における労働者の健康障害の予防には様々な要因を考慮しなくてはなりません。物理・化学的,心理・社会的要因などの職場要因や労働者の状況に合わせた個別な対策が必要であると考えられます。我々のグループでは長時間労動や深夜・交替制勤務の健康影響について主観的な指標(ストレス感や疲労の自覚症状)と客観的な指標(ホルモンや免疫指標など)の両面から調査・検討し,労働者の健康障害の予防や健康管理に役立てるための研究を行っています(産医研ニュース 第4号p4 トピック2「長時間労働の健康影響」,第9号p5 トピック3「免疫指標からの健康影響評価」)。
いわゆる過労死の原因の一つとして挙げられる長時間労働は,精神的にも身体的にも過重な負担になるという認識があると思います。しかし,長時間労働の健康影響に関する調査研究は事業者側から歓迎されない一面もあり,調査・検討した報告が多いとは言えません。そのような状況の中で集積された過重な負荷要因と循環器系との関連についての研究結果を検討し,平成13年12月に脳・心臓疾患の労災認定基準が改正され,過重業務の負荷要因においては長時間労働が最重要と位置づけられました。この改正では長期間(約6ヶ月間)の労働時間が評価の対象になったという点が特筆されます。
下図にはある技術開発職場における調査結果を示しました。技術開発に携わる労働者の週労働時間を集計し,その時間の長さから3つの群に分けて比較しました。週労働時間の長い群ではデヒドロエピアンドロステロン硫酸(DHEA-S)の血中濃度が低い傾向でした(図1)。この副腎皮質ホルモンは加齢と共に血中濃度が減少し,様々な疾患との関連が示唆されており,脳内でも合成されていることから最近では神経ステロイドとして注目されています。さらにストレスや疲労によって血中濃度が低くなるという報告もあります。また,週労働時間の長い群では仕事に関連したストレス感が多く(図2),疲労の自覚症状も多いという結果が得られました。この職場の長時間労働者は心身共に健康度が低下していたと考えられます。
最近では,いわゆる過労死と共に過労自殺が問題となっています。その予防のために,労働時間数に加え,抑うつや仕事の満足度などといった精神的健康度についての検討も行っています。さらに様々な職場や職種の労働者を対象に現場調査を行い,個別のガイドライン作成の基礎資料を提供したいと考えています。
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