水素吸蔵合金および高性能磁石合金の環境影響と
これらに含まれる金属の生体への影響
作業環境計測研究部 鷹屋光俊
高性能の新しい工業製品が生み出されるとき、多くの場合新しい材料の開発を伴います。最近、高性能の機器が次々に生まれているのは、様々な新しい材料の開発に成功しているからともいえます。これらの新素材は私たちの生活を大変豊かなものにしてくれますが、これらの新素材の環境や、新素材を用いた製品の生産・リサイクルに携わる労働者へのリスクは未知数です。産業医学総合研究所では、新素材のなかでも特殊な機能を有する機能性材料の分析法と生体影響を研究する研究プロジェクトを結成しました。このプロジェクトでは、ITや電気自動車の普及に伴って使用量も種類も急速に増加している水素吸蔵合金(ポータブルオーディオの電池や燃料電池などに用いられる)と高性能磁石合金(パソコンのハードディスクの駆動モーター等に使用されている。)に着目し、これらの一般環境への広がりを把握するための分析方法の開発と、水素吸蔵合金と高性能磁石合金の成分として、使用量が飛躍的に増えている希土類と呼ばれる新しい金属の化合物の生体影響を調べるための動物実験を行っています。
このプロジェクトは3年目を迎えています。現在までに、分析法の分野では、水素吸蔵合金や磁石合金の純水および食塩水への溶解速度の測定を行っています。また、希土類元素の酸化物は、空気中の水蒸気や二酸化炭素と反応して水酸化物や炭酸塩に変化することが知られていますが、この変化の速度をX線回折と呼ばれる分析方法で測定しています。これらの実験の結果は、機能性材料由来の希土類元素の環境への広がりの速度や、実際に人間の体に入るときどのような化合物として存在するかといったことの推定に必要な基礎的な情報となります。
生体影響の研究としては、まず、比較的大量の被検物質を実験動物の体内に入れることが可能である注入法を用いて、ラットの肺に希土類元素の化合物を入れ、肺に急性障害が発生しないかどうかを調べ、希土類元素の毒性の強さの傾向を調べました。この実験結果を参考にして、今年からはより長期の慢性の影響を調べる実験と、希土類元素の粉じんを含む空気をラットに呼吸させる、より現実に近い実験を始めています。
機能性材料は種類が多くすべての材料の環境影響・生体影響を精査するのは不可能ですが、要所を押さえた研究を行うことにより、環境負荷の少ない機能性材料の開発に寄与できればと考えています。
この研究は、厚生労働省労働基準局長から受託した環境省地球環境保全等試験研究費「機能性材料由来の金属微粒子の分析法と生体影響の研究」で行われています。
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