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National Institute of Industrial Health

炭酸ガスアーク溶接が発生する
紫外放射の研究

作業環境計測研究部  奥野 勉

 アーク溶接のアークは、強い紫外放射(紫外線)を発生します。アーク溶接の作業場では、この紫外放射が、異物感、眼痛、羞明、流涙、結膜充血などを症状とする紫外眼炎を引き起こしています。日本溶接協会の行ったアンケート調査では、アーク溶接作業場で働く作業者の86%が、過去に紫外眼炎を経験していますが、さらに、45%が、現在でも月1回以上の頻度で経験しています。日本には、35万人もの専門的なアーク溶接作業者がいますが、そのほかにも、他の作業に付随してアーク溶接を行う作業者がいます。さらに、アーク溶接作業場には、ほかの作業を行う作業者もいます。したがって、実際に、非常に多くの作業者が、アーク溶接の紫外放射の影響を受けていると考えられます。しかし、これまでは、アーク溶接が発生する紫外放射の有害性の評価は、あまり行われていませんでした。そこで、本研究では、作業場で現在最も多く使用されている溶接法である炭酸ガスアーク溶接について、これが発生する紫外放射の測定・評価を行っています。以下では、これについて、ご紹介します。
 溶接ロボットを用い、軟鋼の板上において、炭酸ガスアーク溶接のアークを実験的に発生させます。このときに発生する紫外放射の有害性の強さ(実効照度)を、ACGIHの勧告に準拠した測定器を用いて測定します。溶接ワイヤは、ソリッドワイヤまたはフラックス入りワイヤを用います。
 グラフに、測定結果の例を示します。縦軸(左側)は、アークからの距離が50cmにおける実効照度です。この距離は、アーク溶接を行う際の作業者の位置に相当します。横軸は、溶接電流です。実効照度は、一般に、溶接電流とともに増加することがわかります。アーク溶接作業場では、近年、溶接の効率を向上させるため、より大きな溶接電流を使用する傾向にありますが、それに伴い、発生する紫外放射も強くなりつつあると考えられます。グラフの右側の縦軸は、左側の縦軸の実効照度に対する1日あたりの許容暴露時間を示しています。この測定結果の場合、1日あたりの許容暴露時間は、わずか1−30秒程度になります。したがって、非常に有害性の高い紫外放射であることがわかります。本研究では、ほかに、実効照度が、アークからの放射の角度に強く依存し、水平からの角度が50-60°のときに最大となること、および、実効照度が、アークからの距離の自乗に反比例することを明らかしています。こうしたデータは、アーク溶接作業場において紫外放射障害防止対策を考える際の基礎になると考えられます。
 なお、本研究は、人間工学特性研究部の小嶋純および有害性評価研究部の斉藤宏之と共同で行っているものです。

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