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National Institute of Industrial Health

低周波音の健康影響に関する研究について

人間工学特性研究部  高橋 幸雄

作業環境における騒音問題としては、騒音性難聴の予防と対策が重要な問題であり、以前から多くの研究がなされてきました。現在ではA特性荷重曲線を利用した測定・評価方法が確立され、騒音性難聴に対するリスク評価がきちんと行えるようになっています。ところで、A特性荷重曲線では低周波音が小さく評価されますが、これはヒトの聴覚の感度が低周波音に対して鈍くなっている(低周波音は聞こえにくい)ためです。従って、騒音性難聴が重要視されてきた作業環境においては、低周波音は無視されてきたとも言えるのですが、その一方で、一般環境(住環境)においては、低周波音が原因と思われる不快感(不定愁訴)を訴える住民が存在することが知られています。
 では作業環境において、低周波音による何らかの健康影響は考えられるのでしょうか。現在のところ、この問いに対する明確な答えはありません。また、仮に何らかの影響があったとしても、現行のA特性荷重曲線による騒音評価では、そのリスク評価はできません。そこで、作業環境における低周波音による健康影響はあるのか、もしあるとすればリスク評価はどうすればよいのか、ということが将来を見据えた研究テーマとして重要になってくると考えられます。
 我々は現在、この低周波音の健康影響についての研究を進めています。対象としている低周波音の周波数は概ね100Hz以下で、いわゆる超低周波音(周波数が20Hz以下)も含みます。この領域の低周波音に曝露された場合、人体に振動感が生じるということが知られており、我々もこの点に注目しています。と言うのも、曝露時の不快感といった心理的な反応であれば、やがて「慣れ」が生じて不快感が低減することが多いのですが、物理的・機械的な反応である人体の振動は、長期間の曝露によっても低減しないと考えられるからです。この振動の大きさ自体は小さいのですが、現段階では、それが健康影響の原因となる可能性を否定はできません。
 研究には、超低周波音実験室(写真)を使用しています。現在はまだ基礎的な実験を行っている段階で、健康影響の有無を議論できるような結果は得られていませんが、近い将来、低周波音のリスク評価の基礎となるデータを得ることができると期待しています。

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