溶接作業における換気装置の適切な稼動要件
人間工学特性研究部 柴田 延幸
以前から、溶接作業におけるヒューム・ガス対策が比較的困難であることが指摘されていました。現在、溶接作業に従事している労働者のじん肺新規有所見者数は粉じん作業従事者の中で最も多く、全体の約24%を占めているのが実状です。
局所排気装置の導入からみた溶接作業の特殊性を考えてみると、大きく分けて次の二点が挙げられるでしょう。まず一つは、溶接作業を行う時、アーク放電を伴うため周囲には熱の発生による浮力流支配の流れ場が発生することです。この流れによりアーク点から徐々に拡散しながら上昇する気流を生じさせます。溶接ヒュームはこの上昇気流にしたがって飛散するので、局所排気装置でこれらの溶接ヒュームを捕捉するためにはこの上昇気流を支配するような吸引気流を作り出さなければなりません。もう一つは、溶接ヒュームの発生源であるアーク点に排気フードを向けて溶接ヒュームの捕捉を行おうとする際、吸引速度が大きすぎると溶接部にブローホール(あるいは空孔)と呼ばれる欠陥が生じてしまうことです。「従来の粉じんに対する制御風速を当てはめて局所排気装置を運転したところ、多数のブローホールができてしまった」などの事例も報告されています。したがって、溶接作業場では上記の二点に留意しつつ、運転費を極力押さえた最適運転条件を探さなければなりません。
産医研では、産医研ニュースNo.3掲載の「溶接作業における有害因子の曝露と光学的対策の研究」(岩崎毅)でも触れているように、実験室内に設置した炭酸ガスアーク溶接ロボットを用いて実験的に溶接作業を行い、溶接部に欠陥を発生させることなく溶接作業者のヒューム曝露濃度を低減させるために必要な局所排気装置の稼動要件を検討してきました。その結果、溶接アークの電圧に応じて熱浮力による上昇気流の強弱が変化するわけですが、同様に溶接欠陥を生じさせないための最小風速も大きく影響を受けることが明らかになりました。さらに、溶接欠陥を生じさせずに作業者の呼吸域の溶接ヒューム濃度を低減させる方法として、発生源ではなく呼吸域に排気フード前面を配置させる方法が効果的であることも明らかになりました。
今後、ヒューム以外の諸物質の吸入複合曝露実験の結果と合わせ、溶接作業に特化した局所排気装置の稼動要件を確立し、よりわかりやすい形で提案できるように検討を重ねていきたいと考えております。
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