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National Institute of Industrial Health

溶接作業者の個人曝露濃度測定

人間工学特性研究部 小嶋純

 平成14年度を最終年度とする第5次粉じん障害防止総合対策の重点事項には、その第3-1項に「アーク溶接作業による粉じん障害防止対策の推進」が挙げられています。このことからも明らかなように現場における溶接粉じんの問題は今なお深刻で、その測定や対策に関する研究は現在も我が国の労働衛生工学上の重要なテーマのひとつと言えます。
 作業環境管理の観点から見た溶接作業場の特殊性は、溶接粉じんの環境濃度と個人曝露濃度とが大きく異なる点にあります。これは、一般の溶接作業では作業者とアーク点(粉じん発生源)が究めて近接するため、粉じんが気中に拡散される以前に作業者が局所的な高濃度曝露を受けるためです。現在、溶接作業場では作業環境測定の法的義務はありませんが、個々の現場では自主的に行われるケースも少なくありません。しかし折角作業環境測定が行われても、作業者がアーク点近傍で被る高濃度曝露の実態は十分測定結果に反映されないのが実状です 1)。その点、個人曝露濃度は現行の管理区分決定に直接利用することは出来ませんが、作業者の曝露状況を正確に評価判断する上でたいへん有用な情報を提供するものです。また、一般に適正な測定位置の決定が難しいとされるB測定を判断する上でも役立つものと思われます。
 この溶接粉じんの個人曝露濃度を正確に行うためには、適正なサンプリング位置を決めなくてはなりません。通常、溶接作業者はアークからの強い光や飛び散るスパッターから顔面を守るため保護面を着用しますが、これを被った状態では呼吸域が面体の内部に隠れるため、通常の個人サンプラーのように襟元に装着したのでは正確な測定が得られないことも予想されるのです。そこで当研究所の実験では、溶接作業者に見立てた人形に溶接用保護面を被せ、その傍で炭酸ガスアーク溶接作業を行い、面体の内外の計4箇所におけるサンプリングによって個人曝露濃度を求めてみました。その結果、面体の内部では外部に比べ明らかに低い濃度が記録され、溶接作業時の個人曝露濃度測定ではサンプリング位置について特殊な配慮が必要であることが判明しました。さらに、作業者の姿勢・外乱気流の存在などについても実験を行い、それらが及ぼす影響を検証しました。この様な結果は、実際に溶接粉じんの個人曝露濃度測定を行う際に有用な知見になると考えられます。なお、この研究の詳細は既に雑誌記事2)として掲載されていますので、興味のある方には御参考として頂ければ幸いです。

参考文献
1) 輿重治、気中濃度と曝露濃度の関係における溶接作業の特異性について、作業環境7(6)、57-62、1986
2) 小嶋純、柴田延幸、岩崎毅、沈光鎮、溶接作業時の個人曝露粉じん濃度の測定について、セイフテキダイジェスト46(5)、7-19、2000

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