独立行政法人産業安全研究所 と独立行政法人産業医学総合研究所は平成18年4月1日をもって統合し,独立行政法人労働安全衛生総合研究所となりました。
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独立行政法人 産業医学総合研究所
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National Institute of Industrial Health


(1)設立の背景

 我が国の労働衛生は、戦後労働基準法の施行を契機として着実な発展を見せてきたが、科学技術の進歩に伴う労働環境の変化、作業方法の変革、これらに因って惹き起こされる労働者の健康障害は益々多岐に亘ってきたので、労働省では労働衛生上の諸問題について、行政に直結した立場から科学的な調査研究を進めるため、昭和31年4月にその附属機関として労働衛生研究所を設置した。

 労働衛生研究所においては、専ら職業病の予防に重点を置き、特に職業病を労働環境・人間系の中に把握するための研究を行い、従来の我が国の労働衛生で最も遅れた分野であった労働衛生工学の研究の推進に力を注ぎ、また企業内での事務、生産両面における作業形態の変革に因る肉体的、精神的影響の研究に意を用い、適正労働条件の設定に寄与すべく努力を重ねてきた。さらに、産業の発展に伴い続発する各種の産業中毒、その他行政的に即時対応を要求される労働衛生上の諸問題について、その解明に当ってきた。

 しかし、科学技術の著しい進歩、国民経済の向上に伴う産業の急激な発展によって、産業界における人間・環境系、人間・機械系に、量的にも、また質的にも従来と比較にならぬ健康阻害因子が導入され、一方、近年我が国における労働力の構成は、中高年労働者、婦人労働者、潜在性異常状態にある労働者等の占める比率が急速に増大したため、主として平均的労働者、頑健な労働者を対象としたこれまでの産業医学から脱皮する必要が生じてきた。また、近年注目を浴びるようになった各種の化学物質等に因る職業がんの問題は、単に特殊な作業に従事している間のみでなく、離職後を包含する全生涯を通じての対策が要求され、さらに、作業環境の改善においても、単に有害因子の除去だけでなく、労働者の福祉を考え、一歩進んで快適な作業環境の形成を指向すべきであることが強調されるようになってきた。

 このようなことから、労働者の健康、機能障害、疾病を医学的見地から総合的に研究すべきであるとの要請があり、労働省は昭和44年頃より新しく産業医学に関する総合研究機関の設置を提唱した。

 昭和51年5月19日に労働省設置法の改正が国会の承認を得て、労働者の健康の保持増進及び職業性疾病の病因、診断、予防等に関する総合的な調査研究を行うことを目的として産業医学総合研究所を設置し、同年7月1日に開所した。

 その後、国の行政組織改革の一環として、平成13年4月1日、独立行政法人組織に移行した。



(2)産業医学総合研究所の役割

 当研究所は、厚生労働省の附属機関として労働者の健康の保持増進及び職業性疾病の病因、診断、予防等に関する総合的な調査研究を行うため設置されたことから、その推進に際しては労働基準行政と密接な連携を保ちつつ、行政ニーズに即応した研究を行い、基準行政を技術的に支援することによって労働者の健康の保持増進に寄与することをその責務としている。

 以下に当研究所の主な研究内容を紹介する。

A) 作業態様の変貌に対応した作業管理

 技術革新による生産工程の機械化や自動化、高度の精神的緊張を必要とする監視作業、気温・湿度・照度等を制御した作業環境の増加、変形労働時間制の普及など、変貌する作業様態に対して労働者の健康を守るためには適切な作業管理が必要である。このため、各種労働負担の評価方法や負担の軽減方法、また負担と疾病との関係について研究し、作業管理の具体的手法の開発を進めている。

B) 高齢者及び女性の労働能力と作業適応

 人口構成の変化により今後更に高齢者の就業が増加し、他方では男女雇用機会の均等化が進み女性の就業も増加すると予測されている。しかし、これまでの職場環境は多くの場合、一定の年齢以下の男性労働者を前提に整備されてきた。そこで、高齢者や女性も職場で能力を十分に発揮できるように、その生理機能や労働能力の特徴を明らかにし、研究成果を適切な職場環境づくりに必要な技術情報として提供している。

C) 有害化学物質による健康障害の予防

 有機溶剤等の化学物質による職業性疾病は、近年発生件数が減少してきたが、依然として相当数の患者が毎年発生している。また、これらの化学物質を取り扱う労働者の特殊健康診断の結果では、有所見者の数はむしろ増加の傾向にある。このため、これらの有害化学物質の体内への吸収経路、代謝過程、標的臓器での毒性発現などを総合的に研究し、その生体影響をさらに厳密に理解することにより、既に認知された職業性疾病の完全な予防と今後生じる可能性のある健康障害の未然の防止を目指している。

D) 健康影響の早期検出と有害因子感受性の個人差

 作業環境等の改善により有害化学物質等への暴露の低減化が進み、労働者の健康障害は定型的な職業性疾病が成立した時点ではなく、より軽度な健康影響の段階で検出する必要性が生じている。このため、有害化学物質等の暴露指標や健康影響指標となりうる物質を尿、血液中などで測定する手法を開発し、健康影響を早期に検出する努力をしている。また、有害化学物質等に対する遺伝的感受性の個人差に関する研究を行い高感受性者における職業性疾病の発症リスクの差異を検討している。

E) 化学物質及び物理因子の有害性予測と評価

 既に職場で使用され、また毎年新たに導入される化学物質は膨大な数にのぼる。このうち職場で新たに導入される物については事前に有害性を評価する必要があり、また既に職場で用いられている化学物質等についても、これまで知られていない新たな健康障害が疑われる場合はその有害性を再評価しなければならない。このため、培養細胞、実験動物、生体試料などを用いる有害性スクリーニングテストを開発し、また必要に応じて労働者集団を対象とする疫学調査を実施することによって、化学物質等の有害性を予測]価している。

F) 作業環境中の有害因子の測定方法の開発と作業環境評価

 有害な化学物質あるいは物理因子への暴露を伴う屋内作業では、作業環境の測定と評価を定期的に実施することにより、労働者の健康障害を未然に防止しなければならない。 これらの作業環境測定が作業現場において適切に実施されるには有効かつ簡便な測定方法の開発と普及が必要であるため、有害化学物質の状態分析や物性の解析などの基礎的研究からぐたいてきな測定技術の開発にいたる広汎な研究を行い、測定基準や測定指針の作成に貢献している。

G) 作業環境、作業機器等に関する人間工学的及び労働衛生工学的対策

 職業性疾病の一部は、振動A光などの物理因子によって引き起こされる。これらの職業病を予防するため、有害因子の発生源である作業機器、工具の物理的特性、あるいは暴露を防止するための保護具の物理的特性が、労働者の生理的特性にどの程度適合するのかを人間工学的な観点から評価している。さらに、作業環境から有害化学物質等を除去する局所排気装置等の工学的対策に関する調査研究を行うことにより、人間―機械系とそれを囲む環境の総合的な改善や快適化を目指している。

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