独立行政法人産業安全研究所 と独立行政法人産業医学総合研究所は平成18年4月1日をもって統合し,独立行政法人労働安全衛生総合研究所となりました。
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独立行政法人 産業医学総合研究所
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National Institute of Industrial Health

平成10年度研究評価報告書要約



1.評価目的

 産業医学総合研究所の研究課題ならびに運営について、「国の研究開発全般に共通する評価の実施方法の在り方についての大綱的指針(平成9年8月7日、内閣総理大臣決定)」に沿った厳正な評価を行うことにより、より創造的で、社会ニーズに適合する高度な研究を展開することを目的として、研究成果と計画に関する研究所内評価体制を整備し、外部有識者委員による外部研究評価委員会を設置し、研究計画と成果等の評価を実施した。ここに、平成10年度研究評価報告書を要約版としてインターネット上で公表する。

2.評価対象

 本年度は、平成10年度の経常研究と特別研究成果ならびに平成11年度の経常研究と特別研究計画を評価対象とした。経常研究とは、各専門分野に対応する研究者が、単独、または少人数で行う、比較的長期間にわたって実施する調査研究である。特別研究とは、比較的短期間(通常3年程度)に労働衛生に関する有用な研究成果が見込める課題について、集中的に行う調査研究である。

3.評価方法

各研究員および研究代表者によって提出された経常研究および特別研究の成果等報告書と研究計画報告書は、その内容を数段階の所内研究評価諸会議で評価した後で、外部評価委員会に付託され、学識経験者による外部評価を受けた。外部評価委員会は下記の学識経験者11名から構成される。

委員氏名(敬称略) 所属(平成11年3月現在)
岩田 弘敏 岐阜大学医学部 教授
遠藤 仁 杏林大学医学部 教授
岸 玲子 北海道大学医学部 教授
酒井 一博 労働科学研究所 副所長
荘司 栄徳 千葉産業保健推進センター 所長
高瀬 佳久 日本医師会 常任理事(産業保健担当)
竹内 康浩 名古屋大学医学部 教授
田中 勇武 産業医科大学産業生態学研究所 所長
沼野 雄志 沼野労働安全衛生コンサルタント事務所 所長
保原 喜志夫(委員長) 北海道大学法学部 教授
安井 至 東京大学国際産学・共同研究センター 所長

4.評価結果の概括

1) 経常研究

 a.作業条件適応研究部:

 研究成果:昨年度終了の研究課題は1件、実施中の研究課題は12件である。テーマは、労働負担評価に係る実験的研究とともに、工場やオフィスなど実際の産業場面を対象とした現場調査など多岐にわたる。外部評価委員からは、多彩な課題をカバーし、労働衛生ニーズや有用性、論文発表等の研究成果は高く評価されている。一方では、研究部としての戦略と特徴を示すよう求められている。
 研究計画:継続課題は8件、新規課題は4件である。外部評価委員会によれば、課題テーマの選択は適切であり、労働衛生ニーズに応えた研究課題と評価されている。新規課題に対する期待も大きい。

 b.健康障害予防研究部:

 研究成果:昨年度終了の研究課題が7件、実施中の研究課題が10件である。その内容は、化学物質の生体影響やモニタリング、各種の職場要因による健康障害などを含んでいる。外部評価においては、全体としてはおおむね高い評価を得ており中間以下の評価は無かった。一方、評価委員個々の指摘としては、部内の研究者相互の連携や研究成果を更に現場に応用していく積極性が求められた。
 研究計画:継続研究課題が8件、新規研究課題が2件である。神経系・生殖系・生体防御系などを主要な研究対象としている。外部評価においては、全体としてはおおむね高い評価を得た。個々の評価委員からは、研究設備を十分に活用して研究所をアピールする事、研究チームとしての活動や成果を現場に還元すべき事などの指摘があった。

 c.有害性評価研究部:

 研究成果:昨年度終了の研究課題は5件、継続中の課題は13件である。課題は実験中毒学的研究が大半を占める。外部評価委員から、目標の達成度、労働衛生ニーズの満足度、学術的意義、基盤技術としての有用性に関して、高い評価点が与えられたが、基礎的研究に対する精力的な展開のみならず、研究成果情報の現場への提供や労働衛生基準値設定への寄与など労働衛生ニーズへの適合性も指摘された。
 研究計画:継続課題が12件、新規課題1件である。全般的に基盤的有用性が期待される。計画に対して外部評価委員8名より「やや高い」総合評価点が与えられたが、部長による研究進捗状況把握の必要性、部内検討会議での課題に対する労働衛生学的意義の討論の必要性も指摘された。

 d.作業環境計測研究部:

 研究成果:昨年度の終了課題は5件、継続中は15件で、作業環境中の粉じん、化学物質、物理因子など広範囲の測定・評価法に関する研究が概ね順調に進められている。外部評価委員からは、成果の労働衛生ニーズ満足度、成果の学術的意義と基盤研究としての有用性が高く評価された。一方、新規化学物質への対応を測定法のみならず生体影響を含むプロジェクトとして積極的に進めるべき、現場への応用が重要である、研究課題を絞り込む必要がある、などの指摘を受けた。
 研究計画:継続課題13件、新規課題2件で、外部評価委員からは、作業環境の計測技術開発を中心とした地道な研究が多いことに高い評価を得た。問題点として、新規化学物質の研究を生体側と組んでプロジェクト研究として進めるべき、個別研究を一人の能力に頼るだけでなく部内検討会等で他の研究者の意見・助言を入れて進めるべき、重要研究課題には経常研究でも人と予算を集中する研究体制が必要である、などの指摘があった。

 e.人間工学特性研究部:

 研究成果:昨年度終了の研究課題は2件で、継続中の課題は10件である。課題の内容は局所排気等、粉じんの挙動等、騒音・振動に分けられる。外部評価委員から研究目標の達成度は高い評価を得ているが、成果(データ)は国内外の論文、報告書等で社会還元の必要がある、また現場・行政への還元を具体化し早急に実行すること、工場等での成果の応用例がどの程度あるか疑問であると指摘があった。
 研究計画:継続課題が10件であり内容は大きい変化はない。外部評価委員からは労働衛生ニーズとしての重要性、整合性、緊急性は高い評価を得たが、テーマ数を制限し、研究戦略に基づき優先順位設定が必要である。国際的な研究動向と到達点を明確にする。部内研究者のアドバイス等入れて研究方向を定める。現場から課題発掘し企業との共同研究を希望する。マンパワーについて方法等の工夫が必要と指摘があった。

 f.企画調整部:

 研究成果:行政統計関連および疫学研究が6件、実験的研究が2件の合計8課題を実施した。課題の労働衛生ニーズへの適合性等は内部的に評価されたが、部全体の業績向上のための指導体制も言及された。外部評価では、企画調整部の管理業務遂行と行政統計・疫学的研究実施の負担軽減策、行政資料を用いる疫学調査など産医研の独自性を評価する意見が見られた。
 研究計画:本年度は疫学的研究5課題を含む7課題を実施するが、疫学的研究に随伴する定型的作業に対する予算的配慮が部内で問題となった。外部評価では、総合評価を含めて8項目に高い評価点が与えられ、情報収集・疫学研究を含む本年度の研究計画に対する期待が寄せられた。また産医研全体の研究方針、協力体制整備、国内外の研究者支援などの業務に関する計画の必要性が指摘された。

2) 特別研究

 昨年度終了の特別研究課題は4件であった。現在実施中の特別研究課題は合計15課題である。平成11年度より開始される特別研究課題は4件である。

 研究開始後1年以上経過している特別研究14課題についての関係研究員の自己評価は、研究目標の達成度が「高い」4課題、「中間」8課題、「低い」2課題であり、成果の労働衛生ニーズ満足度は「高い」6、「中間」7、「低い」1課題、成果の学術的意義「高い」8、「中間」5、「低い」1、総合的評価は「高い」又は「やや高い」7、「中間」4、「やや低い」3であった。多くの研究で年次計画に沿った着実な研究が進展している様子が伺えた。

 平成11年度に実施される主要な特別研究は12課題である。このうち、9課題は継続して、また、4課題が新規に開始される。 平成10年は、ダイオキシンや環境ホルモンなど、化学物質の健康影響が大きな社会問題となった。また、職場でも、フロンの使用規制により開発されたフロン代替品が毒性不明のまま使われ、労働者に健康障害事例が発生した。このように化学物質の有害性への関心が高まっていることを受けて、労災特別研究では、フロン代替品と環境ホルモンの健康障害防止を目的とした2つの研究を開始する。これまでの研究により蓄積された当研究所の人的、技術的資源等を活用して、これらの問題の解決に貢献しようとするものである。

 全ての特別研究の成果と計画に対する外部評価委員の評価結果について、要約版で紹介することはできないので、外部評価委員会において、それぞれ事後評価、中間評価、事前評価を受けた代表的な特別研究3課題の評価結果を以下に概括する。

 a.事後評価:「寒冷作業基準の労働生理学的評価に関する研究 (H7 - H9)」:

 昨年度終了した本課題は、当初の目標をほぼ達成した研究として高く評価された。本研究を実施する過程で得られた生理学的成果は、原著論文さらに啓蒙的解説論文として広く公表されており、今後の労働現場における寒冷曝露による健康障害防止に役立つものと期待される。外部評価委員の評価点に依れば、研究目標の達成度、成果の労働衛生ニーズ、学術的意義、基盤技術としての有用性等の観点から、本研究成果は一様に高く評価されている。また同時に、一人で行う研究の限界指摘されており、今後の研究の広がりと一層の展開が期待されている。

 b) 中間評価:「環境汚染物質の神経毒性評価に関する神経行動薬理学的解析(H9-H11)」:

 研究成果:トルエンの神経行動機能に及ぼす影響を実験中毒学的に解明する研究であり、関連原著論文も多数出版されている。外部評価委員から、成果の学術的意義に関して高い評価を、労働衛生ニーズ満足度と目標達成度、基盤技術としての有用性に関して中間の評価を受けた。神経毒性評価法開発の重要性に対して評価を得たが、トルエン以外の物質の研究実施、腹腔内投与の妥当性および体系的スクリーニング法確立への道筋提示について指摘された。
 研究計画:本研究より、トルエンを含めた多種の化学物質に適用し得る神経毒性スクリーニング法の開発が期待される。外部評価委員4名から、総合評価として「やや高い」評価点を受けたが、動物実験からヒトへの外挿と低濃度曝露影響への外挿および成果の労働衛生への活用を検討すべきとの意見も出された。

 c) 事前評価:「労働環境中における内分泌かく乱物質(いわゆる環境ホルモン)等の遺伝子レベルの健康影響評価法などに関する研究(H11-H14)」:

 外部評価においては、総合評価はやや高いとする評価と判断保留とする評価が同数で最も多かった。判断保留が多かったのは、分子生物学的な内容と労働衛生との関連が十分に理解されなかったためと思われた。個々の評価委員の意見をみると、内分泌かく乱物質という研究テーマの重要性及び分子生物学的な手法を駆使する技術の先端性はおおむね理解を得たが、具体的な研究内容及び労働衛生上の実用性などについては未だ十分な理解を得ていないと思われ、これからの研究成果により本研究の有用性を実証する事が期待されている。また、研究成果が労働衛生にどのように還元されるか、明確な説明が更に求められている。
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