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National Institute of Industrial Health

仕事のストレスとストレスホルモン

須藤 綾子

 ストレスという言葉はいろいろな人がいろいろな意味で使っていて、わかったようでわからない言葉です。一方、ストレスに関連して分泌の様子が変化するホルモンがあり、これらはストレスホルモンと呼ばれています。そして、生体内のストレスホルモンを測定することによりストレスがある程度客観的に説明できると考えられています。よく知られているストレスホルモンは、主として循環器系に影響を及ぼすアドレナリンとノルアドレナリン、および、糖代謝や免疫系などに影響するコルチゾールです。では、ストレスホルモンを測ればストレスについてなにがどうのようにわかるのでしょうか? 精神的作業のストレスに関する私たちのこれまでの実験的な研究から述べてみます。
 健康な成人に精神的な作業(加算作業など)をできるだけ早くかつ正確に1時間程度行って頂きますと、尿中のアドレナリンが平均50〜100%増加しますが、他のホルモンはほとんど変化しません。ところが、作業を午前も午後も比較的長時間行いますとアドレナリンに加えてノルアドレナリンも50%程度増加します。しかし、この場合もコルチゾールはほとんど変化しません。コルチゾール増加の傾向は、精神作業を騒音の環境下で行った時に認められました。このとき被験者に心理状態を質問紙でききますと、騒音下の作業では強いイライラ感を訴えます。これらの結果から、私たちは、アドレナリンは主に作業の遂行に伴う昂揚した気分の状態を表し、長時間作業で変化するノルアドレナリンは作業による疲労の状態を示唆し、また、コルチゾールは作業そのものの影響よりも作業を妨害し苦痛感を与えるような要因と関連するのではないか、と考えています。
 スウェーデンの研究者は様々な精神作業のときのストレスホルモンを測り、特にコルチゾールの変化に注目して図のような仮説を提唱しています。この仮説によりますと、作業をした場合の心理的な変化として、苦痛を伴わない努力感(effort、何かを一生懸命やったという感じ)はストレスとしてはむしろ小さいが、努力感を伴わない苦痛は大きなストレスとなると推測されます。
 以上の結果から、ストレスにもいろいろな種類があって、それぞれ、ホルモンなどが関与する生体内の反応が異なっていることがわかります。職場のストレスもいろいろで、ある程度許容できるものと、対策が必要なものとがあると思われます。

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