労働安全衛生総合研究所

クールビズ導入の効果は?

独立行政法人労働安全衛生総合研究所

 2005年夏期から、地球温温暖化防止会議の京都議定書の発効を受け、クールビズ運動が我が国で始まりました。これは室温を28℃にして冷房を弱めにするかわりに着衣量を調節することで快適な状態に近づけようというものです。今夏は5年目になり、オフィスだけでなく交通機関や商業施設等でも同様の試みがなされるようになり、今やノージャケット・ノーネクタイで働く姿は夏期には一般的なものとなってきています。

 実際に、クールビズ実施オフィスで働く人を対象に調査を行うと、様々な回答が得られます*。女性の場合はクールビズ環境をおおむね「暑くもなく寒くもなく快適」と評価しているのに対し、男性の場合は「ちょうどよく快適」と答える人から「非常に暑く非常に不快」と答える人まで様々です。クールビズ導入以前の調査ではしばしば、女性の多くから冷えによる不快愁訴が寄せられていましたが、クールビズ導入でオフィスの「冷房病」は激減し、その点では大きく様変わりしたといえます。

 では、クールビズ環境を暑く感じる人はどのような対策をとればいいでしょうか。室内温熱環境を評価する指標の1つにPMV(Predicted Mean Vote, 予測平均温冷感申告)というものがあります。PMVとは、人体が快適と感じるときの人体熱平衡式を基準とし、気温・湿度・気流速度・平均放射温度の4環境要素と、着衣量および代謝量の2人体側要素の計6変数を用いて、その温熱環境が快適環境(PMV=0)からどれくらい離れているのか(暑い側は+、寒い側は−)を算出したものです。そして国際標準ISO7730はPMVが-0.5から+0.5を快適範囲として定義しています。気温を28℃より低くできない場合には、着衣量を減らす、気流速度を増加させる、湿度を減少させる、といった方法でより快適な環境に近づけることができるはずです。

 具体的には、着衣を半袖・長ズボンから半袖・半ズボン着用程度に減少させるとPMV=+0.5を達成することができますが、オフィスの種類によっては難しいかもしれません。そこで着衣量はそのままで、相対湿度が眼や皮膚の乾燥を感じない程度の40%の場合、気流速度を扇風機の「微風」程度0.3m/s程度に増加させればPMV<+0.5の環境を作り出すことができます。また相対湿度50%であれば気流速度のみ扇風機の「弱」程度の 0.4m/sに増加させることでもPMVは+0.5以下となり、気温を下げたのと同じ効果を得ることが可能です。

 最近では、制服に半ズボンを導入した宅配便会社**や、海外でも日本のクールビズをまねた活動(例えば国連ビルの「クールUN」***)がみられ、クールビズ活動は広がりをみせています。これからは地球温暖化もふまえた、よりよい労働環境の在りかたを考えていく必要があるでしょう。

(国際情報・研究振興センター研究員 榎本ヒカル)


参考文献
* 榎本他、「クールビズ」導入オフィスにおける勤務者の温熱環境評価
** 国内宅配便業界初!セールスドライバーもクールビズに対応〜社員の声を取り入れ、「ハーフパンツ」導入〜
*** New 'cool' initiative to slash UN's own emission of greenhousegases

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