労働安全衛生総合研究所

監事からみた独立行政法人のガバナンス

独立行政法人労働安全衛生総合研究所

 昨年の7月25日に労働安全衛生総合研究所の監事を仰せつかったので、監事として丁度1年が経過したところである。今回、コラム執筆の機会が与えられたので、この1年間の感想めいたものを述べてみたい。

 独立行政法人制度が創設されて今年は10年目であるが、事業仕分け等の報道ぶりをみると、残念ながら独立行政法人は社会から十分な信頼を得ているとは言えない状況である。その理由を考えてみると、社会の理解を得るための独立行政法人サイドの取組が十分ではなかったこともあるかとは思うが、独立行政法人制度そのものについても改善の余地があるような気がする。

 監事の職務について言えば、一部の業務を除けば、その責任と権限が曖昧で、独立行政法人の統治全体の中で果たす役割、位置付けが今一つはっきりしていないように感じる。監事として、研究所に適用される法令や研究所が定めた各種規程の遵守状況、主管大臣から指示された中期目標を踏まえて策定した中期計画や年度計画の実施状況、研究所の運営管理の適正かつ効率的な実施等のチェックは行っているものの、独立行政法人の基本法令である独立行政法人通則法には、監事の職務・権限として、「業務を監査すること」及び「監査の結果に基づき、必要があると認めるときは、法人の長又は主務大臣に意見を提出することができる」としか規定されていない。また、個別法(当研究所の場合は独立行政法人労働安全衛生総合研究所法)や監事監査規程を見ても、何をどのようにどこまで監査するのかといったことについて詳細は示されていない。監事監査では独立行政法人の運営管理そのものを対象にしていることを踏まえると、監事業務の曖昧さは独立行政法人の運営管理そのものの曖昧さに起因しているようにも思われる。即ち、事務・事業は適正かつ効率的な運営に努めるというルールがあるだけで、運営管理を律する具体的なルールは存在していない。結果として、運営管理の方法等については、それを担う役職員の判断に全面的に委ねられている。そのため外部からその適否を評価することは困難で、それが独立行政法人の運営管理の透明感につながり、ひいては信頼性の醸成を阻む要因になっているのではないかという気がする。

 このような中、今年3月、総務省から「独立行政法人における内部統制と評価について」と題する報告書が公表された。僭越ながら、やや理念が先行した内容となっているようにも見受けるが、監事の役割、職務の明確化について一定の方向性を示すものとなっている。また、独立行政法人の運営管理そのものを取り上げており、各独立行政法人の運営管理に当たる役職員にとって大きな影響を持つものとなっている。新しいルールが導入されれば、独立行政法人の運営管理に当たる者には細心の注意を払った判断が求められるほか、監事にとっても職務上の責任が増えることになるが、報告書は独立行政法人に対する信頼性の確保・向上につながるものであり、肯定的に受け止めるべきであろうと思う。今後どのような形で報告書が実施に移されていくか注視していきたい。


(監事 榎本克哉)

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