労働安全衛生総合研究所

静電気による障害

独立行政法人労働安全衛生総合研究所

 今のような低温低湿の冬に,セーターを脱ぐと,パチパチという音とともに青白い発光が目だつことがあります。また,カーペットを敷いた床を歩いた後,ドアのノブに手を触れたとき鋭い痛みを感じるときもあります。これらは人の身体に蓄積した静電気が放電するときに起こる現象であります。静電気現象は,人間にいやな痛みを感じさせるだけではなく,産業災害や障害も発生させています。これは静電気の放電現象や静電気の吸引・反発作用などの力学現象によるものであります。ここでは,静電気によって引き起こされる障害及び災害について簡単に述べたいと思います。

模式図:静電気による発生する障害及び災害
静電気による発生する障害及び災害

 一つ目に,火災・爆発があります。静電気放電による火災・爆発は可燃性雰囲気の中で,燃える物質の着火エネルギーを超える静電気放電が与えられた場合に発生します。例えば,プロパンガスや水素が漏れているところ,あるいはガソリンタンクの口が開き,ガソリン蒸気が充満している所でその着火エネルギーを超える静電気放電が起こると,これが点火源となって,爆発や火災といった災害が起こってしまうのです。

 二つ目に,静電気放電の人体への影響として電撃があります。特に火花放電が人体を通して起こると,人体に大電流が流れて細胞が刺激され電撃が起こります。電流値が大きいほど激しいショックを感じることになります。静電気による電撃は瞬間的であるので人命にかかわるほどのことはありませんが,そのショックで転倒,墜落などの二次災害が発生する可能性があります。

 三つ目に,電子機器の損傷や誤動作があります。最近の IC などの半導体素子は,小型化,高集積化しており,配線間の距離が短くなっています。特に, MOS 型 IC などは,ゲート酸化膜にごく薄い二酸化シリコン等を使用しており,これが静電気放電によって壊れ,その結果,コンピューターの誤動作や,産業用ロボットの暴走など,社会的に影響の大きい災害に発展する恐れがあります。

 最後に,静電気放電現象による痕跡が製品の品質不良を起こす場合があります。たとえば,塗装や印刷の仕上がり不良,写真フィルムの感光など,いろいろな場面で障害が現れます。また,静電気の力学現象で現れる障害として,粉体による目詰まりや汚れの付着などが実際の現場においては大きな問題になっています。

 以上,単純と思える静電気現象でも障害及び災害に至ることがありますので,静電気に関する正しい理解と十分な注意が必要でしょう。このような静電気に関する障害及び災害の防止対策についてのお話は,またの機会にゆずりたいと思います。

(電気安全研究グループ 主任研究員 崔 光石)

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