労働安全衛生総合研究所

あなたの会社で取扱っている化学品の地震対策は大丈夫ですか?

独立行政法人労働安全衛生総合研究所

 未曾有の被害をもたらした去る3月11日に発生した東日本大震災は、その被災範囲が東日本のほぼ太平洋側全域におよび、2週間を過ぎた今でもその被害の全容は掴めておりません。被災者の皆様には、心よりお見舞い申し上げます。
 今回の地震でも、製油所におけるガスの漏洩による爆発火災や、燃料の漏洩拡散による延焼など、化学物質が関与する火災の発生は避けられませんでした。また火災に至らずとも、重油やメタンガスの巨大タンク、化学薬品の入ったドラム缶などが津波によって広範囲に流出し、その取り扱いに苦慮しているようです。このように地震などで化学物質がいったん漏洩すると、環境に多大な影響を与えます。しかし、化学プラントは言うに及びませんが、それ以外の事業所の皆様におかれましても、多少に関わらず化学薬品の使用は避けて通れないのが現状であろうと推察いたします。ここでは、化学工場に限らず、化学品を取り扱っている事業所一般に向けての化学品の地震対策について思いつくままにまとめてみました。取扱い量が少量の場合を想定しています。以下に述べますことは、いずれも極めて基礎的なことの再確認ばかりですが、 地震などによる被害が最小限になるように、ご使用中の化学品の安全対策を見直す上でのご参考にしていただければ幸いです。

1. 化学品のハザード評価


 既にMSDS等を通じて、ご利用の化学品の危険性、有毒性の把握はお済みかと存じますが、改めてその内容を取り扱う皆様の間で周知して頂くことが、万一の場合の被害を軽減することにつながります。どうぞ機会をみて、改めて身近にある化学品の持つ危険性を皆様で再度ご確認頂ければと思います。

2. 化学品の保管


 使用していない化学品は所定の保管施設(保管庫等)に入っておりますでしょうか?後ですぐ使うからと、不用意に外に出したままになっていませんか?また、所定の保管場所については、例えば以下の点について、もう一度チェックを行い、万一の火災や中毒事故の発生をできるだけ防ぐようにしてください。

  1. 保管容器の耐震対策
     化学品保管容器の耐震性は大丈夫ですか?例えば保管容器がガラスであれば、破損防止対策として、破損防止ネットの活用等をお勧めいたします。また、棚等の保管場所からの落下防止について、どのような対策を講じていますか?ガスボンベの元栓は、閉められていますか?レギュレーターのバルブを閉めただけで、元栓が開いていたりしませんか?
  2. 混触危険の把握
     保管施設内の化学品同士の混触危険の恐れはないでしょうか?例えば禁水性物質と水溶液やアルコール類、酸化剤と可燃物 など、混合することによって発火したり有毒ガスを発生したりする薬品同士が、万一の漏洩時に混じり合う恐れはありませんか?
  3. 保管施設の状況
     保管施設の耐震性、防爆性は、仮に内部に保管してある化学品が漏洩して発火、爆発した場合などの被害拡大防止に効果があります。また、保管施設の周囲は、どのようになっていますか?周囲の状況も、万一の場合の延焼防止、被害拡大防止に非常に重要です。例えば、保管施設の周りに、可燃物が山積みになっていたりしませんか?改めて保管施設そのものが最適であるかどうか、見直してみてください。

3. 化学品の使用


 化学品を使用中に地震が起こった場合でもその漏洩等による被害を最小限にするために、使用方法についても是非見直してみてください。

  1. 保管施設からの持ち出し量
     「使用のために保管施設から取り出す化学品保管容器の容量が充分に検討されているでしょうか?例えば、わずかな量を使うだけのために、一斗缶やドラム缶を作業現場に持ち出したりしていませんか?せっかく保管施設に耐震対策が施されていても、不必要に大量に持ち出しては元の木阿弥です。使用時の一時的な持ち出し量を減らす方策を是非ご検討ください。
  2. 使用時容器の耐震対策
     使用時の化学品容器はどのように設置されていますか?保管施設では対策を施していても、使用時になると、その容器の落下防止対策等が不充分ということはありませんか?
  3. 移送手段
     化学品容器とその供給先を結ぶ配管等の移送手段はどうなっていますか?地震が起きた時、移送中の化学品はどうなるでしょうか?
  4. 使用場所周囲の状況
     使用場所周辺の可燃物、着火源の有無を把握し可能な限り除去することで、万一の漏洩時に火災や爆発が生じたり延焼するリスクを最小限にできます。
  5. 反応の緊急停止
     反応容器等の化学品が実際に使われている場所では、その化学品を加熱して反応を行わせていることも多いと思います。万一の地震が起きた場合でも、例えば電源を用いずに緊急に反応を停止する方法を準備しておけば、冷却などの反応制御ができなくなった時の反応暴走などのリスクを減らすことができます。

4. 化学品の廃棄


 仮に、漏洩した化学品がすぐには火災や中毒事故を起こさなかったとしても、それをどのように安全に廃棄するかの手順をあらかじめ検討しておかないと、被災現場の復旧作業時などに不用意な作業によって火災や中毒の発生を引き起こしかねません。被災後では混乱の中で適切な対応が取れない恐れがありますので、事前に安全な廃棄方法を検討しておくことが重要です。

(人間工学・リスク管理研究グループ 首席研究員 藤本康弘)

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