労働安全衛生総合研究所

大震災の被災地以外で働く人の心の反応とケア

独立行政法人労働安全衛生総合研究所

 3月11日の大震災は、日本の観測史上最大の、未曾有の規模でした。被災者の皆さまには心よりお見舞い申し上げます。また、被災地で行政その他さまざまな業務に携わる方々、救助のために被災地に入った方々などの方々は、想像を絶する大きさの職業性ストレスを受け続けながら、現在も懸命に活動に当たっておられることと、頭が下がります。
 そうした方々はもちろんのこと、被災地でない地域で日常の業務をこなす多くの方々にとっても、報道でこれだけの災害を目の当たりにして、平常心でいられるはずもありません。
 被災した方々、あるいは救援者の方々の心のケアについては、すでに専門機関のホームページ等(本ホームページの「災害時のメンタルヘルスに関する情報のリスト」(http://www.jniosh.go.jp/mail-mag/2011/34-3-3.html )もご参照下さい)でも多く語られていますので、ここでは、被災地から離れた職場で仕事をする方々にも参考になるようなことがらをまとめてみます。

1.職場でのケアの留意点


  1. 職場に被災地の出身者がいたら
     被災地出身の職員には、ご家族ご親族が無事であったかなど、管理監督者や周囲が必ず声かけをしてください。ご本人が話をしたそうだったら、話し相手になってください。話をしたくなさそうだったら、無理に話を聞き出す必要はありません。
  2. 職場にふだんの業務にない作業が生じたら
     職場が被災地でなくても、地震での落下物・倒壊物の片づけなど、ふだんの業務にない作業が生じることはよくあります。また、交通機関の不具合などにより、一部の職員に、不在職員分の作業負担がかかることもあります。そうした作業の従事者に対して、管理監督者から、必ずねぎらいの言葉をかけてください。
  3. 他にふだんと異なる言動の従業員がいたら
     落ち着きがなくなる、あるいは、ずっとぼーっとしているなど、ふだんと違う行動パターンをとる職員がいないかどうか、見守ってください。もしそういう職員がいたら、管理監督者または周囲から声かけをしてください。

2.被災地でなくても起こりうる心の反応


 被災した方々はもちろん、被災地域でない職場で働く人でも何らかの反応が現れることがあります。

  1. よく見られる反応
     「気が散って仕事に集中できない」「仕事をする気力が失せる」などは、典型的なごくふつうの反応です。
  2. より身近に体験した人での反応
     被災地でなくても、余震の多い地域であれば、「疲れているのに眠れない」「ちょっとした物音(例えばエアコンの始動音など)にも過敏になる」などの反応が起こることもあります。これらは、震災という非日常の出来事に対するごく正常の反応なのです。さらには、「かえって気分がハイになる」「仕事その他に過度にのめり込む」ことさえあります。また、過去に大きな災害の経験者であれば、被災場面の報道をみて、過去の経験がまざまざと目の前によみがえってやりきれないと訴える人もいます。

 2週間以上、上記の反応、たとえば眠れない、過敏になるなどの症状が続き、仕事に大きな支障をきたしているような場合は、心の専門家にご相談ください。

(作業条件適応研究グループ 上席研究員 倉林るみい)

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