労働安全衛生総合研究所

国際産業安全衛生シンポジウム2012(ISISH2012)に参加して

独立行政法人労働安全衛生総合研究所

 11月14〜15日に韓国国立ソウル科学技術大学校で開催された国際産業安全衛生シンポジウム2012(ISISH2012)に参加してきました。このシンポジウムは、当研究所と研究協力協定を行っている韓国の大学等との研究交流を目的として、2年ごとに日本と韓国とで交互に開催されており、主に両国の安全衛生に関する様々な情報について、双方の研究者が直接ディスカッションを行える貴重な場となっています。
 今回のシンポジウムは、韓国国立ソウル科学技術大学校敷地内のHyesenggwanホールで開催され、午前中はソウル大学のYoun, En Sup教授の基調講演と当研究所の豊澤康男安全研究領域長による特別講演が、また午後からは日本と韓国の8名の研究員による一般講演が行われました。一般講演では、当研究所の崔光石主任研究員が座長を務め、4名の研究員(清水尚憲上席研究員、呂健主任研究員、Mohsen Vigeh研究員、北條理恵子研究員)が以下の演題で発表を行いました。会場には韓国国内の安全衛生関係の研究者や、ソウル科学技術大学校安全工学科の学生を中心に100名ほどの聴講者が集まり、活発なディスカッションが行われました(写真1)。

写真:シンポジウムでの記念撮影
写真1 シンポジウムでの記念撮影

  1. Current situation of risk management in construction and incident investigations in Japan.(豊澤康男)
    日本の建設現場でのリスク管理の状況を紹介するとともに問題点を指摘し、さらに建設災害の災害調査の例を取り上げ、建設業における望ましいリスク管理について解説しました。
  2. Study of Ensuring Worksite Safety for Multiple Workers -A Proposal of an Access Control System Using RFID and Image Recognition Technologies.(清水尚憲)
    複数作業者を対象とした作業現場での安全確保についての一考察として、RFID(Radio Frequency Identification:電波による固体識別)技術と画像識別技術を利用した作業者の入退出管理システムについて紹介しました。
  3. Development of a VR Simulator for Safety of Vehicle Works.(呂健)
    フォークリフトやドラグショベル等の車両系建設機械の作業安全のために当研究所で開発したシミュレータについて紹介しました。
  4. Adverse Effects of Maternal Blood Lead on Pregnancy Outcomes.(Mohsen Vigeh)
    母体の血液中に含まれる鉛成分が妊娠・出産経過におよぼす影響について実験結果を紹介しました。
  5. Genotoxic and Neurobehavioral Effects in Mice after Ethyl Tertiary Butyl Ether Exposure.(北條理恵子)
    エチルt-ブチルエーテルばく露の遺伝毒性(DNA損傷)と神経行動的影響について、マウスを用いた実験結果について紹介しました。

 翌日は、テクニカルツアーとして、建設機械を製造している斗山インフラコア(Doosan Infracore Co.ltd)のクローラ式建設機械の製造ラインを見学するとともに、EHS(Environment, Health & Safety)部門の担当者から企業概要とEHS部門の活動内容の説明を受けました(写真2)。

写真:斗山インフラコアでの記念撮影
写真2 斗山インフラコアでの記念撮影

 生産ラインでは、作業者の動線と機械の作業エリアが適切に分けられており、重複する箇所については、リスクアセスメントに基づく保護装置が設置されていました。また、作業者自らが短い時間でも体を動かすための運動器具などを設置するなど、リフレッシュできる環境が整備されていました。他にも、作業者の健康促進プログラムや禁煙プログラムについては、単なる補助制度だけではなく、結果を達成した際の報酬制度も用意されており、作業者のモチベーション向上に大きく貢献しているとのことでした。
 この会社のEHS関連の問題事項は、最優先事項として位置付けられているところに安全衛生に関しての企業倫理の高さを見ることができました。さらに、EHS部門の活動に対する企業経営者側の関心は非常に高く、CEO自らが細かく現場の問題をチェックするとともに、経営状況が悪化して他の部門の予算が減らされている時でも、EHS部門の予算は減らされずに一定額が計上されるようになっていることに感銘を受けました。
 次回のISISHは、Workshop in Industrial Safety & Health(WISH)と名前を変え、二年後に日本で開催されることが決定しています。その際には、当研究所だけではなく、安全や労働衛生関係の研究を行っている日本国内の他の研究所や大学などに積極的な参加を呼びかけ、今回に負けないくらい安全及び労働衛生分野で充実したディスカッションが行える場にしたいと思いました。

(機械システム安全研究グループ 上席研究員 清水 尚憲)

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