労働安全衛生総合研究所

第1回西太平洋地域におけるWHO協力センターの地域フォーラム(1st Regional Forum of WHO Collaborating Centres in the Western Pacific Region)に参加して

独立行政法人労働安全衛生総合研究所

1.WHO西太平洋地域における初めての全体会議


 2014年11月13、14日に行われた第1回西太平洋地域におけるWHO協力センターの地域フォーラム(1st Regional Forum of WHO Collaborating Centres in the Western Pacific Region)に、理事長の小川康恭と参加しました。開催場所はフィリピン・マニラにあるWHO西太平洋地域事務局でした(写真1)。東京は寒くなり始めでしたが、マニラは最高気温が30度ほどで、上着を着ているとやはり暑く感じました。
 WHO協力センターとは、ご存じの方も多いと思いますが、WHOの様々な活動を支えるために指定された機関(大学や研究所等)で、国際的な協力ネットワークでつながっています。WHO西太平洋地域には、加盟10カ国、184のWHO協力センターがあります(中国64、オーストラリア46、日本33、韓国17、シンガポール10、マレーシア5、ニュージーランド4、フィリピン2、ベトナム2、モンゴル1)。このうち、今回参加したのは135センターでした。
 WHO西太平洋地域では1962年から協力センターが活動しています。にもかかわらず、なぜ今回が初めての地域全体の会議なのかを事務局スタッフに尋ねてみました。すると、「労働衛生や環境衛生など専門領域ごとの会議は当然、これまでに開かれてきた。しかし、全ての協力センターが一同に介して議論する機会はなかった。そこで、同じ地域の中で専門を超えて相互に交流する必要があるという、事務局長シン・ヨンスー先生の発案による」というお答えでした。いわば、各協力センターを横串でつなぐ初めての回になったと言えます。このような機会はWHOにある6つの地域の中でも初めてとなるそうです。


写真1 WHO西太平洋地域事務局と今回のフォーラムのポスター

 

2.フォーラムの内容


 今回の目的は、協力センター間の相互協力のあり方をさぐり、協力関係をより強めるための方策を見いだすことでした。全体会議では包括的なことを全センターで議論し、個別会議では専門領域ごとに分かれて議論を行いました。

1)全体会議
 1日目、開会式に続くシン事務局長による基調講演では、急速に変わる世の中の状況に応じて、 WHOの本部と地域事務局は各国の状況をよく考慮し、柔軟に活動していかなければならないことを述べました。具体的には、次のカテゴリーに渡ります:感染症、非感染症、生涯を通じた健康、医療制度、非常時の事前対策・サーベイランス・対応など。そして、こうした活動を支える協力センターの重要性を強調しました。
 2日目には「良好な協力関係の実践」というテーマで、参加各国から下記の報告がありました。いずれも成功の秘訣として、明確な目標、定期的な相互コミュニケーションと評価、WHO本部との密接な連携、文化・風土の違いの理解などを挙げていました。
 ・韓国(国立がんセンター):フィジー、モンゴル、マカオ、パプアニューギニアのがんの登録、予防、早期発見に対する支援
 ・日本(産業医科大学):ベトナムのアスベスト使用禁止に向けた支援
 ・中国(国立インフルエンザセンター):国内のインフルエンザ対策およびモンゴル等の検査・診断に対する支援
 ・オーストラリア(ジョージ国際保健研究所):モンゴルの減塩活動に対する支援
 ・ニュージーランド(ウェリントン病院):南太平洋諸国のパラメディカル(医療周辺従事者)訓練に対する支援
 ・フィリピン(熱帯医学研究所):西太平洋地域7カ国のマラリア検査・診断に対する支援


写真2 全体会議の様子


2)個別会議
 各協力センターは専門領域ごとの部屋に分かれて議論しました。労働衛生のほかには、感染症、非感染症、メンタルヘルス、勤労不能、リプロダクティブヘルス、環境衛生、医療制度、国際保健規則、蔵書と出版などの領域がありました。
 労働衛生のセッションには、オーストラリア[1]、韓国[2]、シンガポール[2]、ベトナム[1]、日本[2:産業医大と安衛研]からのセンターが参加しました([ ]内はセンターの数)。まず、各センターより活動報告を行って、相互の理解を高めました。安衛研からは熱中症の予防と保健医療職の健康保護などについて活動状況を報告しました。続いて、それぞれのセンターのもつ役割の位置づけ、ネットワーク推進、4加盟国(カンボジア、ラオス、ベトナム、モンゴル)への支援のあり方などについて議論しました。とくに、WHO本部の行動戦略(Global Plan of Action of Workers' Health、2008年から2017年)と西太平洋地域の行動戦略(Regional Framework For Action for Occupational Health、2011年から2015年)との間に終了年のズレがある件について、結論は出ませんでしたが、どう対応するかも討議しました。


写真3 個別会議の様子(協力センター活動の障壁、その解決策、今後の改善策についてシートを使って議論)

3.まとめ


 今回のフォーラムを通して、WHO西太平洋地域事務局の活動や方針をよく理解でき、また内外の労働衛生協力センターの活動状況も把握できました。これらの情報は今後のセンター活動を進める上で有益になると思われます。「横串」の効果はたしかにあったと感じます。
 地理的に近い国・地域であるので、抱えている問題もよく重なります。例えば、自然災害はその良い例です。地元の新聞には、昨年の大きな台風によって、フィリピンのある地域一帯が壊されてしまい、生活をどう工面するか、メンタル不調をどう乗り越えるかなど、課題が山積しているという記事がありました。これは、東日本大震災後のわが国の状況と全く同じです。
 最後になりますが、西太平洋地域事務局の職員が会議の中でも外でも十二分に活躍されていました。二日目の夕食会では事務局の職員総出で、歌に、踊りに、演奏に、素晴らしいパフォーマンスを披露してくださいました(写真4)。また、空港−宿−会場をそれぞれ結ぶためのバスをすべて手配してくださいました。そのおかげで、効率よく移動できました。


写真4 西太平洋地域事務局の職員による歌唱

 当研究所は来年7月で協力センターとしての指定期間が終わります。WHO本部ならびに西太平洋地域の活動に貢献できるよう、再指定に向けた準備を行いながら、努めたいと思います。
  
(国際情報・研究振興センター 上席研究員 高橋正也)

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