労働安全衛生総合研究所

足場からの墜落防止措置の検討と労働安全衛生規則の改正について

独立行政法人労働安全衛生総合研究所

1.はじめに


 建設業における労働災害による死亡災害は、従来から墜落によるものが最も多く発生していました。このため、足場からの墜落災害防止対策は重要なものとなっており、足場先行工法や手すり先行工法のガイドライン制定など順次強化され、一定の効果を上げています。しかし、墜落による死亡災害の発生割合は依然として大きなものとなっていたため、さらなる墜落防止措置について検討する必要がありました。
 そこで、足場の墜落防止措置の現状や外国の規制の状況等を調査し、実態の分析と対策策定のための所要の検討を行うことを目的として、厚生労働省の指導のもと、「足場からの墜落防止措置に関する調査研究会」を安衛研に設置し、平成19年5月から平成20年10月までの1年5ヶ月にわたり検討しました。その間、写真1に示すように、人体ダミーを用いた足場からの墜落防止措置に関する実験を実施し、メッシュシート(足場の外側に張るネット)の墜落防止効果等を検証しました。
 その報告書は、以下の安衛研Webページに掲載されていますのでご参照下さい。
 http://www.jniosh.go.jp/publication/houkoku/houkoku_2008_03.html



写真1 人体ダミーを用いた足場からの墜落防止措置に関する実験

 この報告書を参考に、平成21年3月2日に労働安全衛生規則の一部を改正する省令(平成21年厚生労働省令第23号)が公布され、同年6月1日から施行されました。改正の主な内容は、①足場等の作業場所(以下、作業床)からの墜落防止措置の充実、②足場等の作業床からの物体の落下防止措置の追加、③足場等の安全点検の充実の三点です。また、規則の改正後、その効果を検証し必要な対策について更なる推進を図る必要があるとの観点から、専門家による「足場からの墜落防止措置の効果検証・評価検討会」(以下「検討会」)が開催され、安衛研からも筆者が参加して足場からの墜落・転落災害の防止対策のさらなる検討が行われてきました。
 その検討結果を受け、足場等からの墜落防止に関する労働安全衛生規則の一部を改正する省令(平成27年厚生労働省令第30号。以下「改正省令」)が平成27年3月5日に公布され、同年7月1日から施行されることになりました。また、足場の組立解体に関する安全衛生特別教育規程の一部を改正する告示(平成27年厚生労働省告示第114号)が平成27年3月25日に公示され、同年7月1日から適用されることになりました。
 ここでは、検討会の中で安衛研が協力して実施したアンケート調査の結果の一部について、改正省令の内容を交え紹介します。

2.アンケート調査の概要


 アンケート調査は、平成26年1月31日から2月14日に実施しました。アンケートの対象者は、平成10年度から平成25年度までの安全優良職長厚生労働大臣顕彰受賞者であって、現在も就労している方としました。調査対象者は1,060人で、有効回答者数556人、有効回答率52.5%でした。
 アンケートの主な内容は、(1)通常作業時における足場からの墜落防止措置、(2)足場の組立て作業時の墜落防止措置に加え、足場の組立て・解体等に関する教育、足場の点検等についてです。(1)と(2)の結果の例について改正省令の内容を交え述べたいと思います。

(1)通常作業時における足場からの墜落防止措置

 わく組足場(鳥居型のわくを柱にした足場)を、高所作業を行う場所として使用する場合、写真2に示すように柱と作業床となる床材の隙間が広いと、その隙間から墜落するおそれがあります。表1は、その隙間を狭くする措置について質問した結果です。狭くする措置について、総計で「必要」が79.7%、「必ずしも必要ではないが、望ましい」が15.5%、「不要」が1.8%でした。95%以上が、「必要」または「望ましい」と回答しており、柱と床材の隙間を狭くする措置は重要と考えられます。また、「必要」及び「望ましい」の理由としては、「人の墜落防止に有効」が最も多くありました。
 このような結果を参考に、検討会で検討した結果、改正省令では柱と床材の隙間を12cm未満とすること等、通常作業時における足場からの墜落防止措置が新たに規定されました。


写真2 柱と床材の隙間


表1 わく組足場における柱と床材の隙間を狭くする措置に関する結果(検討会報告書より)

(2)足場の組立て作業時の墜落防止措置

 最近、足場の組立て(または解体)作業時の墜落災害を防止するため、足場の最上層の作業床を取り付ける(または取り外す)前に、その一段下から「先行手すり」と呼ばれる手すりを設置することにより、作業床の外側に常に手すりがある工法が用いられています。この工法は「手すり先行工法」と呼ばれ、ガイドライン等により広く普及が図られています。写真3は、手すり先行工法により組み立てられた足場であり、安全帯(墜落防護のための命綱)が取り付けられるわく状の「先行手すり」を使用しています。
 足場の組立て解体時に、このような安全帯を取り付ける設備がないため安全帯が使用できず、墜落した事例が数多くあります。そこで、安全帯を取り付ける設備の設置による安全帯の使用について質問しました。


写真3 手すり先行工法により組み立てられた足場

 表2は、足場の組立て作業時に、一段下から先行手すりを設置し、墜落防止のため安全帯をかける措置について質問した結果です。その結果、この措置について「適当」が総計で55.1%、「適当であるが、問題もある」が32.9%でした。両者を合わせると88%にもなり、この措置は概ね適当であるとの意見が大部分を占めています。

表2 一段下から先行手すりを設置し安全帯をかける措置に関する結果(検討会報告書より)

 一方、表3は、「先行手すり」ではなく、従来から用いられている「親綱」と呼ばれる安全帯を取り付けるロープを作業床の一段下から先行して設置し、墜落防止のため安全帯をかける措置について質問した結果です。その結果、この措置について「適当」が総計で38.7%、「適当であるが、問題もある」が37.8%でした。両者を合わせると76.5%にもなり、この措置も「先行手すり」と同様に、概ね適当であるとの意見が大部分を占めています。

表3 一段下から親綱を設置し安全帯をかける措置に関する結果(検討会報告書より)

 このような結果を参考に、検討会で検討した結果、改正省令では足場の組立て等の作業に係る墜落防止措置として、安全帯を安全に取り付けるための設備を設ける等の措置を講ずることが、新たに規定されました。

3.おわりに


 改正省令や改正された安全衛生特別教育規程では、この他に、足場の組立て解体または変更の作業従事者に対する特別教育の実施や、特定事業を行う注文者(足場を使用する建設会社)による点検義務の充実、および作業構台に係る墜落防止措置の充実等、多くの規定が追加されました。今回はその一部しか紹介できませんでしたが、興味のある方は以下のWebページを参考にして下さい。

アンケート結果について(検討会報告書の別添3)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000064124.html

改正省令について
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000081917.html

 安衛研では、今後も継続的に足場からの墜落防止研究に取り組んで行く予定です。さらに、足場以外にも屋根やがけ・斜面からの墜落等、頻発する墜落災害の防止に関する研究を実施し、墜落災害の減少に寄与して行きたいと考えています。


(労働災害調査分析センター長 大幢勝利)

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