労働安全衛生総合研究所

最近の感電死亡災害の分析と今後の対策

1.はじめに


 電気が原因となった労働災害には感電、火傷、電気ショックによる墜落などの災害があります。感電災害は、例えば人が誤って電圧の高い電線等の露出部に接触したり、特別高圧線(7㎸を超える電圧)に接近したために発生するフラッシオーバー(閃絡)が原因で発生しています。火傷は、電路の短絡やアーク溶接などに伴って発生する数千度にも達するアークや人体に流れる電流に起因して発生しています。アーク溶接に伴っては有害な紫外線や青色光が発生するため、電気性眼炎という目の障害が発生することがあります。
 感電災害は他の型の労働災害と同様に減少しております。感電によって昭和49年には203人が死亡し、休業4日以上の負傷者が561人でしたが1)、平成26年には15人が死亡し、休業4日以上の負傷者は101人にまで減少しております。
 ここでは、平成15年からの10年間に発生した感電死亡災害の分析を行いました。その結果、事業規模が29人以下の事業場で、建設業、製造業において災害が主に発生している状況、また、災害の原因としては、ヒューマンエラーや安全管理体制の不備などソフト面が主であることがわかりました。その対策には安全管理体制の確立など基本的な対策をいかに実効性のあるものにしていくかの重要性が確認できました。

2.感電災害の分析結果


 厚生労働省の職場のあんぜんサイト2)に掲載された死亡災害データベースに基づき、平成15年から24年までの10年間における173人の感電死亡災害の分析結果を示します。
(1)業種別

図1 業種別の感電死亡者数

 図1に示しますように、大分類における業種別では建設業が死亡者数102人で第一位、次いで製造業の47人であり、合計で149人と全体の約86%を占めています。建設業を中分類で見ますと、その他の建設業の死亡者数が71人で第一位であり、次いで建築工事業の27人、土木工事業の4人の順でありました。中分類で死亡者の割合が多かったその他の建設業を小分類で見ますと、電気通信工事業が49人と第一位であり、次いでその他の建設業−その他の13人、機械器具設置工事業の9人となっています。電気通信工事業には有線あるいは無線の電気通信設備を設置する工事などがあり、最近の通信事業の拡大に伴って感電災害が多くなっている可能性が考えられます。

図2 製造業における感電死亡者数(中分類)

 中分類における製造業の内訳を図2に示します。輸送用機械等製造業の死亡者が9人と第一位であり、次いで金属製品製造業の6人、鉄鋼業の6人となっています。

(2)規模別
 図3には規模別の結果を示します。規模が1〜9人での死亡者が第一位で79人、第二位には規模が10〜29人の44人、第三位には規模が30〜49人の15人、第四位には規模が100〜299人の14人、第五位には規模が50〜99人の10人となっています。このように29人以下の小規模事業場での死亡者が123人(全体の71%)と大きな割合を占めています。

図3 規模別の感電死亡者数

(3)電圧別
 図4には低圧と高圧以上とに分けた電圧別の結果を示します。交流600V以下の低圧での死亡者が105人と全体の約61%を占め、交流600Vを超える高圧が56人と約32%を占めていました。電圧別の傾向としては、高圧に比較して低圧の方が感電による死亡者が多い状況にあります。高圧に対しては危険性が認識されて対策が進んでいる一方で、低圧に対しては危険性の認識が十分に浸透せずに対策が必ずしも十分ではないと考えられます。

図4 電圧別の感電死亡者数

(4)起因物別
 図5には起因物別の結果を示します。送配電線等による死亡者が73人(全体の約42%)と最も多く、次いで電力設備の31人(約18%)、アーク溶接装置の14人(約8%)となっています。送配電線等での災害が多いのは、クレーンを用いた作業において送配電線等に接触や、活線近接作業で誤って送配電線に接触することが一因と考えられます。電力設備では、受変電設備の点検作業において、誤って充電部に接触することが一因と考えられます。アーク溶接装置では、誤って溶接棒などの充電部に接触することが一因と考えられます。

図5 起因物別の感電死亡者数

(5)月別
 図6には月別の感電死亡者数を示します。低圧による死亡者105人のうち7、8月ではおのおの26人、37人が死亡し、6、7、8、9月の合計では91人(全体の約87%)と大部分を占めています。これは夏場の高温環境下での作業のために作業者が発汗して人体の抵抗が低下すること、暑さのために肌を露出する可能性が高まること、作業中の注意力が低下することなどが要因と考えられています。高圧は月に対する依存性は見られませんが、高圧に対する危険性が作業者に認識されていることと高圧が使用される受変電設備、送配電線などでは感電防止対策が遵守されていることが要因と考えられます。

図6 月別の感電死亡者数

(6)発生時間帯別
 発生時間帯別の結果を図7に示します。電気工事など屋外で作業することが多いため、日中の作業時間帯での発生割合が多くなっています。

図7 発生時間帯別の感電死亡者数

(7)発生時間帯別
 データベースに記載された災害発生状況の概要に基づき大まかに分類した結果を図8に示します。最近では漏電や絶縁不良といった設備的な要因の死亡者は16人(約9%)と少なく、安全管理体制の不備や作業者のエラーなど設備以外の要因での死亡者が148人(約86%)と大半を占めている状況でした。

図8 原因別の感電死亡者数


3.大規模事業場での安全管理


 以上の分析に基づき、感電災害発生件数の少ない大規模な建設業、造船業における安全管理について実態調査3)を行いました。
 その結果、下記の通り安全衛生の管理が実行されていました。
  • 労働安全衛生法に基づく管理体制が構築されている
  • 安全衛生の規定が整備されている
  • 定期的な職場のパトロールが実施されている
  • 安全教育が実施されている
  • 機器の点検と必要な補修がなされている(例)交流アーク溶接機用自動電撃防止装置
  • 機器の点検マニュアルが整備されている(例)交流アーク溶接機用自動電撃防止装置
  • 特別教育が実施されている(例)アーク溶接等の作業に係る特別教育
  • 4S(整理、整頓、清潔、清掃)が行き届いている
  • 危険予知訓練が行われている
 これらは基本的な事項ですが、それらが現場に実効性のあるものとして実行されていることの重要性が確認できました。

4.おわりに


 感電死亡災害の現状(平成15〜24年)を死亡災害データベースに基づき分析しました。その結果、感電災害が主に発生している業種、月については平成5〜7年1)と同様でありました。また、事業規模が30人未満の事業場で、建設業、製造業における災害の発生割合が多い状況、また、災害発生の原因は漏電、絶縁不良などの設備的な要因よりも、作業者のエラーや安全管理体制などに課題のあることがわかりました。その対策には安全管理体制を確立し、いかに実効性のある施策にするかの重要性が確認できましたので、今後は、安全管理体制の構築のために効果的な事例を収集して、その方策を水平展開することを進めて参ります。


参考文献
  1. 電気と工事編集部編:“ 災害防止のための安全読本”, pp.7〜9, オーム社(1999)
  2. 厚生労働省安全サイト死亡災害データベース
    http://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SIB_FND.aspx
  3. 冨田一、濱島京子、三浦崇:”最近の感電死亡災害の分析と大規模事業場の安全衛生管理”、第48回安全工学研究発表会2015、pp.149-152


  4. (電気安全研究グループ 部長 冨田 一)

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