労働安全衛生総合研究所

金属による爆発・火災災害

1.はじめに


 鉄などの金属は空気中では燃えにくいのですが、薄片や粒子状になると、空気中でも燃焼するものは多いようです。金属を扱う産業現場では、いわゆる燃焼を伴う爆発や火災のほかに、水蒸気爆発が発生する可能性もあります。
 新聞に掲載された記事で、2016年12月から2013年までさかのぼった4年間の金属の爆発や火災の発生状況を表1に示します。事故災害は、金属加工工場のほかに、スクラップ置き場や貨物船で発生していることがわかります。金属の溶解炉での爆発ほか、溶融金属の漏れや過熱による事故災害も発生しています。報道によると、昨年と1昨年の同種災害の発生件数は少なくなっていますが、相対的に廃棄物リサイクル工場での爆発や解体工事等における割合が増えているようです。


2.粉じん爆発・火災の原因物質


 ここで粉じん爆発・火災に関して、研究所が把握している1987(昭和62)年から2010(平成22)年までの爆発・火災災害の原因になった可燃性粉体の種類と件数を表2に示します。金属粉、特にアルミニウム粉およびその合金粉、マグネシウム粉およびその合金粉が関係した事故災害が多いことがよくわかります。



3.マグネシウム合金


 マグネシウムは工業用構造材料としては最も軽く(アルミニウムの比重の約2/3)、その合金は筐体に使われることが多く、ノートパソコンなどモバイル電子機器の軽量化に果たしている役割は大きいようです。前途有望な金属であり、最近では難燃性マグネシウム合金も使われようとしています。研究所では、災害防止のためマグネシム合金に関する粉じん爆発と火災についての研究を行っています1-4)。研究によると、マグネシウム粉が水で少しでも湿ると、燃焼性が格段に増すことが明らかになっています(写真1)。




写真1 水と混ぜてから4分後に着火させたときの燃え拡がりの様子(燃え拡がりは画面右方向)4)

ここでの燃え拡がり速度は20 cm/sで、湿らない場合の速度0.2 cm/sに比べて約100倍大きくなり、危険性が大きくなることがわかりました。


 粉状のマグネシウムやアルミニウムは消防法では危険物(可燃性固体)に、安衛法では爆燃性の粉じんに指定されています。これらは一度発生すると、激しく燃焼し、消火の困難さもあり、火災が拡大しやすい性質を有しているためです。行政によるマグネシウム合金等の取扱方法、安全対策については参考文献5)、6)がありますので参考にして欲しいと思います。


4.おわりに


 マグネシウム合金粉の事故災害が1990年代後半から2000年代前半に頻発したことから、安全教育などの啓発活動、爆発・火災の防止対策が講じられ、以降、事故災害の発生件数は激減しました。しかし、同種事故災害が無くなったわけではないので、災害防止のため、犠牲者を出さないようにたゆまぬ努力が求められています。


参考文献

  1. 松田東栄:マグネシウム及びその合金の粉じん爆発危険性,産業安全研究所研究報告,NIIS-RR-97,pp.47-55,1998.
  2. 八島正明:難燃性マグネシウム合金の研磨粉じんの爆発・火災危険性,安全工学,Vol.62, No.6 ,pp.416-423,2013.
  3. 八島正明:湿ったマグネシウム合金研磨粉の燃焼危険性,労働安全衛生総合研究所特別研究,JNIOSH-SRR-No.45 ,pp.23-31,2015.
  4. 八島正明:マグネシウム合金を扱う金属加工工場における粉じん爆発火災,火災,Vol.66,No.6,pp.25-32,2016.
  5. 厚生労働省労働基準局安全衛生部:通達:携帯電話筐体等の仕上げ加工に係るマグネシウム合金粉じん による爆発火災災害の防止について,基安発第0329001号,平成14(2002)年3月29日.
  6. 消防庁危険物保安室:マグネシウム等の安全対策マニュアル,平成28年6月https://www.fdma.go.jp/html/data/tuchi2806/pdf/safe_manual_mag.pdf(2017年2月16日アクセス),2016.



  7. (化学安全研究グループ 上席研究員 八島正明)


    表1 金属の爆発と火災の発生状況
    発生場所
    (都道府県)
    発生工場など 概 要
    2016 4 岩手 マグネシウム加工工場 パソコン部品の研磨作業中,マグネシウム粉じんを回収する集じん機で爆発が起きた。
    2015 11 愛知 アルミ再生工場 アルミを溶かす溶鉱炉の下にたまったアルミの燃えかすの清掃作業中に爆発が発生した。
    9 福岡 アルミ加工工場 アルミを溶かす作業していたところ,アルミが漏れ出し,水蒸気爆発を起こし,工場が炎上した。
    6 神奈川 チタン精錬工場 粉末状のチタンをドラム缶に入れて保管している建物から火が出た。
    1 神奈川 スクラップ置き場 家電製品等の金属リサイクル工場の廃材置き場から出火した。
    2014 10 静岡 金属再生工場 廃棄アルミ缶からアルミ素材に再生する工程の炉が過熱して燃え,天井や電気ケーブルに広がった。
    8 山口 粉体加工工場 水素化マグネシウムを機械で砕く作業中に出火した。
    8 神奈川 スクラップ置き場 海外輸出用の非鉄金属を扱うスクラップ置き場で火災
    7 福島 金属精錬工場 溶けた高温の銅が炉から大量に漏れ出し,近くの電気ケーブルに燃え移った。1月にも同じ工場で事故があった。
    6 和歌山沖 コンテナ貨物船 航行中,積み荷の鉄くずが燃えた。
    5 東京 金属加工工場 マグネシウム合金の機械仕上げ加工工場で爆発した。
    5 愛知 金属加工工場 鉄のスクラップを溶かす炉で爆発が発生した。
    4 富山 金属鋳造工場 溶解炉で鉄を溶かしていたところ爆発が発生した。
    2 千葉 コンテナ貨物船 鉄くずなど再生資源ごみの運搬船で火災が発生した。
    1 福島 銅精錬工場 溶け出した銅と冷却設備の水が何らかの原因で直接触れ,水蒸気爆発が発生した。
    2013 11 愛知 スクラップ置き場 敷地内の鉄くずが燃えた。
    10 茨城 金属精製工場 精製過程で出る灰からアルミニウムを再抽出する作業中に爆発した。
    7 茨城 スクラップ置き場 輸出用の鉄や非鉄の金属などが置かれていた敷地内で鉄くずやプラスチックなどが燃え,鎮火まで約16時間かかった。
    5 三重 金属製錬工場 アルミニウム精錬工場のアルミくずの乾燥施設内で爆発が発生した。
    4 福岡 スクラップ置き場 野積みされた金属片や廃材などが10時間半にわたって燃え続けた。
    4 大阪 金属製造工場 銅を製造する工場の溶解炉内部で爆発が起き,高温の液状金属が噴出した。
    1 新潟 金属加工工場 チタンとステンレスの板を製造するラインで,機械についていた粉末状の金属くずを取り除いていた際に出火した。


    表2 爆発・火災災害の原因となった可燃性粉体の種類と件数(1987-2010年,研究所の調べ)
    粉 体 件数 粉 体 件数
    アルミニウム粉及びその合金粉(アルミニウムカルシウム合金を含む) 23 松脂(ガムロジン) 1
    マグネシウム粉及びその合金粉 19 ゴム粉 2
    ケイ素粉 6 ビスフェノールA 2
    タンタル粉 2 ABS樹脂粉 1
    チタン粉 1 ポリエチレン粉 1
    亜鉛粉 1 ポリスチレン粉 1
    クロム粉 1 粉体塗料 1
    ジルコニウム粉 2 ポリビニルアルコール 1
    フェロマンガン粉 2 トナー 4
    希土類金属粉(合金粉) 2 樹脂粉(詳細不明) 1
    金属粉(詳細不明) 3 ステアリン酸亜鉛粉 1
    木粉,おがくず 16 ステアリン酸鉛粉 1
    紙粉 4 テレフタル酸 1
    石炭粉 5 パラニトロフェノキシアセトン 1
    活性炭 2 ベンゾグアナミン粉 1
    小麦粉 2 メチルセルロース粉 1
    穀物粉(詳細不明) 1 硫黄 2
    ショ糖エステル 1
    おから乾燥粉 1
    件数の合計 117

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