労働安全衛生総合研究所

スリーステップメソッド 考えはじめの1歩

1.はじめに


 「スリーステップメソッド」をご存知ですか?スリーステップメソッドとは、機械安全国際規格の中にでてくる、リスクを低減する手順や方法をまとめたものです。
 実は、みなさんが現場で実施しているリスクアセスメントにも、このスリーステップメソッドの考え方が活用されています。たとえば、このリーフレット(http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/110405-1.pdf[pdf形式、厚生労働省のWebページへ])では、「スリーステップメソッド」という名前は出てきませんが、リスク低減措置にこんな言葉が書いてあります:「①設計や計画の段階における措置」「②工学的対策」。実は、これがスリーステップメソッドでの「ステップ①本質的安全設計方策」、「ステップ②安全防護」にあたる内容です。
 ところで、このスリーステップメソッド、労働災害防止対策を考える道具として実際に活用しようとすると、最初は、いろいろな困難にぶつかるようです。特に、優先順位の最も高い①の方法を思いつけなくて、柵や安全装置に頼る②の案や、作業者の教育を徹底するといった管理的対策の案ばかりが、でてきてしまうことが多いようです。色々話を伺っていると、対策立案にはじめて挑戦する人には、ここがどうもポイントになるような気がします。
 そこで、今回は「スリーステップメソッドの図解」に挑戦してみたいと思います。



2.本質的安全設計方策を図で考えてみる


 まずは、①設計や計画の段階における措置、に該当する本質的安全設計方策から考えてみましょう。
 本質的安全設計方策の説明には、危険な作業の廃止・変更、危険性や有害性の低い材料への代替、などがありますが、これがあらわすことの本質は、「そもそも、最初から、危険状態が発生しない構造(機械設備や現場)につくりこむ」ことです。
 では、「危険状態がそもそも発生しない」というのは、一体どういうことを言うのでしょうか。これについて図を使って考えてみましょう。図1は、機械安全の分野でよく用いられる、危険源と人との関係を表す図です。ここで、危険区域と人の存在領域が重なる部分を危険状態と呼びます(詳しくは、人が少なくとも1つ以上の危険源にさらされる、暴露される状況、が危険状態の定義です)。




図1 危険状態をあらわす図

 さて、この図1を使うと、本質的安全設計方策の考え方を導き出すことができます。本質的安全設計方策とは、そもそも危険源が生じない構造であること、でした。では、この図1を、分解するなどして、その状態を実際に描いてみて下さい。

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 どうですか?できましたか?答えを こちら に示します。



3.安全防護を図で考えてみる


 次に②工学的対策、に該当する安全防護について考えてみます。
 安全防護というのは、どうしても、人が危険区域に入ってしまう可能性がある場合や、入らざるを得ない場合に実施する対策です。これは、図1に示す状態そのものですね。では、この状態において、危険状態が発生しないようにするには、どうすればいいか、図を考えてみましょう。

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 できましたか?答えを こちら に示します。


4.図を使って考え、判断しない練習を


 本質的安全設計方策や安全防護を図であらわすことができたら、実際の安全対策の事例集などをみて、本質的安全設計方策や安全防護の事例が、図のどれに分類できるかな、ということを考えてみましょう。こまかな事例から得た知識を頭の中で体系化していくには、ある程度の時間と経験が必要になりますけれども、先に引き出しを頭の中に作っておくことで、そこに効率的に知識を詰め込んでいくことができると思います。
 そして、考えるときに大切なことがあります。
 対策を考える練習として、まず、図を使って「アイデアを出す」ことにチャレンジしてみてください。ただし、このとき「判断」をしてはなりません。そんなことできるわけがない、などといった評価は、一旦脇におき、この図を使って1つずつ考え抜いて、アイデアを出すことが肝心です。現場の対策を講ずる際には、色々なアイデアが必要となる場面があるでしょう。そうしたときに、無理だ、馬鹿げている、などという“思い込み”は、対策を講ずる上での阻害要因となりかねません。あなたのアイデアに感化された仲間が、具体的な対策案をだしてくれるかもしれません。



5.おわりに


 ここでは、スリーステップメソッドの本質的安全設計方策と安全防護を、図を使って考える練習をしてみました。安全の専門家からみれば、この図は不十分で不正確なものに映るかもしれません。それでも、考えるための叩き台にはなります。ここで紹介した図は、思考の海に投げ入れる「釣り針についた餌」に過ぎません。餌の種類に応じて釣れた魚(アイデア)の種類が正しいかどうかが問題なのではなく、災害防止対策に結びつく魚が、釣れればよいのです。大切なことは、解釈の厳密さにこだわるのではなく、労働災害防止につながるアイデアを思いつくことです。ぜひ、考えるための道具として、使ってみてください。


参考文献

  1. 厚生労働省,事例でわかる職場のリスクアセスメントhttp://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/110405-1.pdf
  2. 厚生労働省,機械安全規格を活用して労働災害を防ぎましょうhttp://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/150722-1.pdf
  3. 濱島京子, 梅崎重夫. 事故災害の未然防止を目的とする教育を通じた安全学に関する一考察 - 前提条件の思い込みと制約条件としての権限問題への対応の必要性 -. 電子情報通信学会技術研究報告. 2015; 115(367): 5-10.



  4. (電気安全研究グループ 上席研究員 濱島 京子 )

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