労働安全衛生総合研究所

特別研究報告 SRR-No.17 の抄録

独立行政法人労働安全衛生総合研究所

静電気による新原材料の爆発・火災の防止に関する研究

可燃性微粉体の最小着火エネルギーの測定

SRR-No17-02
松田東栄,冨田一,児玉勉
 IEC基準案に準拠する簡易最小着火エネルギー測定装置(MIKE3)を用いて,可燃性粉じんの最小着火エネルギーを測定したところ,1mJ以下の値を示すものが若干見いだされた(ビスフェノールA及びある種のプラスチック添加剤)。求めたデータは相対的着火危険性を示すが,実用的にも十分適用できる値と考えられる。最小着火エネルギーは,粒子径(比表面積径)の累乗に比例して変化するが,粒子径の小さい粉じんが,必ずしも小さい最小着火エネルギーを示すとは限らず,かえって大きい値を示す場合もある。また,粒径分布の広い試料粉では,ふるい分けによって微粉試料を使用すべきであろう。これらの点に配慮して当簡易測定装置を使用するならば,1mJ以下の最小着火エネルギーを有する可燃性粉じんは,今後いくつか見いだされるであろうと思われる。(図6,表1,参考文献24)

可燃性ミストの最小着火エネルギーの測定

SRR-No17-03
松井英憲,大塚輝人
 ミストの基礎的な着火特性を明らかにするため,超音波噴霧発生器を用いて,アルカン類,アルコール/水混合物,及び幾つかのハロゲン化炭化水素について,それらのミストの着火エネルギーの測定を行い,引火点との関連について検討した。次いで,実用的な見地から,スプレーガンを用いた幾つかの洗浄剤等の可燃性液体噴霧における,放電火花による着火特性を調べ,ミスト爆発の抑制方法に関する検討を行った。その結果,引火点が室温より低い液体ミストの最小着火エネルギーは,同種の可燃性ガスと同等の値(1mJ以下)を示し,引火点が室温より高い不揮発性の飽和炭化水素ミストでは,最小着火エネルギーは,約4mJの一定値を示した。水等の不燃性溶剤で可燃性液体を希釈したり,二酸化炭素などで噴射することにより,ミストの着火危険性を軽減し得ることなどを明らかにした。(図7,写真2,参考文献4)

粉じんの最小着火エネルギー測定における放電条件の影響

SRR-No17-04
山隈瑞樹,児玉勉,汪佩蘭
 吹き上げ式粉じん爆発性試験装置(ハルトマン式)を用いて,砂糖粉を対象に放電条件が最小着火エネルギー(MIE)に与える影響を調べた。その結果,まず電極間隙4mmにおいて最小の値(粉じん濃度1.5~1.6 kg/m³)が得られた。また,放電回路に直列に抵抗を入れた場合,キャパシタとの組み合わせで決まる最適値が存在した。例えば,1000pFのときMIEの極小値を与える抵抗は25kΩ以下であった。さらに,RC回路ではLC回路の場合よりも低いMIEが得られた。それは,RC回路の方が放電の持続時間が長いために,熱が効果的に粉じんに伝えられるためと考えられる。抵抗での電力の損失があるために静電エネルギーのうち実際の放電で消費される割合は2~12%であった。しかし予想とは反対に,その割合は抵抗が高くなるほど増加する傾向にあった。これは,放電電流が小さいほどギャップ電圧が高く維持されるためと考えられる。(図8,表2,参6)

振動型粉体最小着火エネルギー試験装置の開発

SRR-No17-05
山隈瑞樹,児玉勉,張偉林
 従来型に比べて構造的に簡単で,安価かつ操作性に優れた粉体最小着火エネルギー試験方式を提案するために,メッシュの振動によって粉じんを形成する「振動型」測定装置を開発し,その基本的な特性を調べた。その結果,従来型に比して,はるかに迅速かつ容易に試験が可能であり,試験に必要とされる試料量も少なくてよい等の利点を確認することができた。一方,試験容器内での粉じん濃度の決定が困難であること,また,試料粉体の形状や静電気的特性によっては粉体粒子が凝集し,実効的な表面横が変化するために,従来型と異なる値となる場合もあることが判明した。(図7,表2,参3)

フレキシブルコンテナの静電気帯電測定

SRR-No17-06
児玉勉,山隈瑞樹,蒲池正之介
 化学工場等可燃物を取り扱う工程において,フレキシブルコンテナを用いた粉体の投入時に爆発・火災が頻発していることに鑑み,市販されている7種類のフレコン及び2種類のポリエチレン製内袋を用いて,模擬粉体(ポリプロピレンペレット)の排出実験を行った。その結果,非帯電防止品が高レベルに帯電することはもちろんであるが,帯電防止品であっても接地をしなかった場合には,危険なレベルにまで達することが判明した。さらに素材の導電率が高い場合には,放電時に火花放電を引き起こしやすいことから,帯電防止品の接地不良は非常に危険であると考えられる。帯電防止品のうち,糸状の導電性素材を適当な間隔で縫い込んだものは,コロナ放電効果による粉体の除竃効果があることが確認された。(図7,表2,参7)

粉体空気輸送における静電気帯電に関する安全評価

SRR-No17-07
児玉勉,西村浩次郎,田畠泰幸
 トナー,粉体塗料,プラスチック原料,医薬中間体等の粉体状の新原材料を空気輸送する際の粉体の静電気帯電に起因するサイロの粉じん爆発を防止する観点から,430kgのPMMA粉体(平均粒径0.398mm)を試料として,直径1.5m,胴長2m,容量1.5m³のSUS製円筒型サイロ及び4インチSUS配管系からなる実規模大の空気輸送実験装置による静電気に関する安全評価を試みた。その結果,(1)サイ口内浮遊粉じんの着火源となる静電気放電の発生限界の指標となるサイロ壁面電界強度は浮遊粉じん雲の規模,濃度及び帯電量に密接に関係すること,(2)今回運転条件ではサイロ内電界強度から安全と評価されるが,実際の設備に適用する際には,設備のサイズ効果,浮遊粉じん濃度を考慮に入れる必要があること,(3)エアパージ型の静電界センサはサイロ壁面電界強度及び配管内粉体の帯電量の検出に使用でき,安全評価に有用であること,等が明らかとなった。(図8,表2,参考文献4)

粒子シミュレーションによる帯電粉体のタンク搬入時の静電気危険性評価 -粒径依存性-

SRR-No17-08
大澤敦
 粉体の製造・取扱工程の静電気危険性の評価及び予測をするため,特に災害が多発しているタンクへの帯電粉体の投入工程について,粒子法を適用することによって自己無撞着シミュレーションを行った。粒径依存性を調べるために,平均粒径が異なり,粒径分布が対数正規分布である4種類の粉体を用いて,粒子の挙動,タンク内の電位,電界分布及び蓄積される静電エネルギーを観測し,静電気危険性を評価した。その結果静電気危険性は粉体の粒径に強く依存することがわかった。また,放電がヒープ表面上及びその近傍あるいは小さい粒径の粉体では投入口付近でも起こる可能性があることが示され,実験や事故例における観測事項をシミュレーションにより実証した。さらに,放電がタンクの中心軸付近のヒープ表面で起こるとき着火の危険性があることが示され,粒径が大きい粉体ほど危険性が増加することが示された。(図5,表1,参考文献8)

噴霧による液体の帯電特性

SRR-No17-09
田畠泰幸,児玉勉,大澤敦
 高圧液体,液化ガス等の漏洩噴出,水蒸気の放出,あるいは造粒,冷却,洗浄,反応,散布,塗装等の液体噴霧プロセスにおける静電気に起因する爆発・火災の防止のための基礎資料を得るため,2流体ノズルを用いて水等の噴霧実験を行った。その結果,(1)ノズルから分離後の液滴の分裂帯電等により,ノズル分離直後よりもノズルから離れた位置の方が噴霧液滴の帯電量が大きくなること,(2)メタノール,ガソリン及びこれらの混合液と水の噴霧では,液種によって帯電量に差はあるものの桁が変わる程ではないこと,(3)噴霧液滴の広がりの端部における帯電電位は,噴霧と直角方向(径方向)について空間電荷密度が均一と仮定した近似式から概算できること,(4)噴霧帯電による液滴の帯電量が大きいことから,帯電雲の規模・濃度が大きくなると,着火性放電を発生する危険性が高いこと,等が明らかとなった。(図2,表4,参考文献5))


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