労働安全衛生総合研究所

安全資料 SD-No.26 の抄録

機械サーボプレスの急停止期間の決定方法に関する研究

SD-No.26
齋藤 剛

 サーボプレスは我が国で開発された新しい形態の動力プレス機械である。このうち、サーボモータの動力をクランクなどの回転式機構又はボールねじなどの直動式機構によってスライドに伝達する構造のものを特に機械サーボプレスと呼ぶ(JIS B 6410 定義3.1.1)。

 従来の機械プレス(フリクションクラッチプレス)において、スライドの停止はメカブレーキによって行われるものであり、いかなるプレスの急停止機構も方式はこの1 つである。しかし、機械サーボプレスでは、スライドの減速/停止に、メカブレーキの他、サーボシステムの減速/停止制御、回生制動、あるいは、モータ端子を短絡又は抵抗素子に接続して行うダイナミックブレーキなど様々な機構が利用可能であり、現実に多種多様な急停止機能が実装されている。このため、メーカー、さらには同一業者が製造するものでも機種が異なると、急停止時のスライドの挙動が同じではなく、特に急停止時間については、メーカー毎に独自の判断基準に基づいて決定(銘板表示)しているのが現状である。

 このような状況に鑑み、2009 年9 月に「JIS B 6410−サーボプレスの安全要求事項−」が発行され、サーボプレスの安全関連機能に一定の基準が示されることとなった。JIS B 6410 は、近年著しく整備が進んだISO/IEC の機能安全規格の内容を取り込み、一連のISO 機械安全規格の枠の中でタイプC 規格の1 つとなるべく各要求事項が策定されたものであり、本規格において“急停止時間”は急停止機能を実行するサブシステムに単一障害が発生した状況を想定し、急停止時間が最も長くなる場合(ワーストケース)での値として決定しなければならないことが明確に規定された。

 しかし、急停止時間の定義付けは確立したものの、JIS B 6410 ではワーストケースの特定において個々の故障や不具合に対する具体的な取り扱いや評価までは示しておらず、当該要求事項の解釈について統一された見解が得られているとは必ずしも言えない。

 そこで、本研究では、JIS B 6410 及び関連する上位規格(特にISO 13849-1:2006)の要求事項、ならびに、現行の国内での動力プレスの故障に対する取り扱いなどを考慮に入れ、JIS B 6410 が要求する“ワーストケースの特定”の意味、ならびに、そこで検討されるべき不具合(障害)の範囲について考察し、機械サーボプレスの急停止時間を決定する際の考え方を明らかにする。さらに、現在市場に投入されているサーボプレスで採用されている典型的な急停止システムの構成例を挙げ、これらについてワーストケースを特定していく具体的なプロセスを詳述する。

 なお、本資料は、(独)労働安全衛生総合研究所と国内プレスメーカー6 社との共同研究課題「サーボプレスの急停止時間の決定法に関する研究」で得た知見をもとに、機械安全規格の枠組みの中でタイプC 規格の1 つとして発行されたJIS B 6410 の解釈として筆者の見解を述べたものである。現行の動力プレス機械構造規格及びこれに関連した技術指針における機械サーボプレスの急停止時間の取り扱いを変更するものではない。


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