労働安全衛生総合研究所

技術指針 TR-94 の抄録

可燃性粉じんの爆発圧力及び圧力上昇速度の測定方法

TR-94-1
松田東栄,板垣晴彦,森崎繁

 近年,粉体技術の進展に伴って,原材料や製品などの物質が粉体として取扱われる産業工程が増加するとともに,粉体の種類も多岐にわたるため,その取扱い量も莫大なものに達する。さらに,高度技術にとって,粉体技術が不可欠のものになりつつあり,微粒子や超微粒子,ナノ微粒子などとして粉体はますますファイン化され,従来利用されることのなかった金属や化合物が,粉体の形態を取る新素材物質として活用されるようにもなっている。このように,産業における粉体の役割はますます重要になってきているが,これらの粉体が可燃性である場合は,ガス爆発や石油火災に匹敵するような可燃性粉体の火災や粉じん爆発の潜在的危険性を忘れてはならない。可燃性粉体の種類や取扱い量の増加は,これらの火災・爆発危険性を増大させるばかりでなく,いったん災害に至れば,場合によっては人災を伴う悲惨な労働災害や多大な損害を招く設備破壊や粉体製品の焼失を引き起こし,企業としての社会的責任も問われることにもなりかねない。

 我が国では,過去39年間で248件の粉じん爆発が工場で発生したと報告されているが,その災害防止を確立する第一歩として,事前の可燃性粉じんの危険性評価が重要である。このような考え方は,化学物質の危険性予測・評価システムと同じものであるが,無数ともいえる化学物質ではそれらの有する化学的性質や化学構造が重要な情報となるのに対して,単に燃えるといった可燃性粉じんでは多少異なった評価が必要である。

 労働安全衛生法には,若干の可燃性粉じんの種類や粉じん爆発の防止措置が規制されているが,粉体技術の進歩は早く,また着火源や可燃性粉じんの種類は多種多様であるため,具体的な可燃性粉じんの爆発危険性の評価法や防止対策については法規制だけでは不十分な面がある。

 このような粉じん爆発の危険性評価及び防止対策の重要性を認識して,かねてから(社)日本粉体工業技術協会では,粉じん爆発試験法委員会を設置して爆発試験方法を審議の結果,1991年同協会規格「粉じん爆発性試験方法」を制定した。しかし,同試験方法は,粉じん爆発のしやすさに基づいた粉じん爆発性を評価の目的としたもので,粉じん爆発が発生した場合の爆発の激しさの評価を目的とした試験方法の作成までには至らなかった。

 当研究所は,長年,化学物質の火災・爆発危険性や粉じん爆発災害の防止研究を実施してきた関係から,産業界の協力を得て,粉じん爆発の激しさの評価に関する規格作成を図る必要性を認め,(社)産業安全技術協会に対して,この件に関する原案作成を依頼した。本指針は同協会に設けられた「粉じん爆発試験法の技術指針研究委員会」において,一年5ヵ月にわたる審議を重ねた結果まとめられた答申をもとに補足検討を加え,技術指針として公表することにしたものである。

 最後に,今回の指針原案の作成に当たりご協力を項いた(社)産業安全技術協会並びに関係委員各位,及び本指針作成の端緒を開かれ,かつ多大な協力を項き,参考資料として APS002規格「粉じん爆発性試験方法」の掲載を許可された(社)日本粉体工業技術協会に対して深く感謝の意を表する。

平成6年1月20日  労働省産業安全研究所  所長  木下 鈞一 


ユーザーのための工場防爆電気設備ガイド −ガス防爆 1994−

TR-94-2

 可燃性ガス,可燃性液体などを取り扱う工場・事業場では,電気設備のもつ点火源によって爆発性雰囲気が着火して爆発事故を生ずるのを防止するため,様々な安全対策が講じられなければならない。

 安全対策としては,爆発性雰囲気に対するものと,電気設備に対するものとに大別されるが,いずれもプロセス設備や電気設備などの設計,製作,運転,保守など,メーカー側及びユーザー側双方でバランスのとれた総合的対策であることが重要である。

 当研究所においては,昭和30年に最初の「工場電気設備防爆指針」を制定して以来,技術の進歩と時代背景を考慮し,これに適宜修改正を加えて今日に至り,多くの関係メーカー及びユーザーに安全対策の指針を提供してきたが,この分野における最近の国際規格の整備充実,上記の防爆指針と防爆電気機器に関する国内の構造規格との重複などのために,今般,防爆指針の制定の意義を根本的に再検討せざるを得なくなった。例えば,同指針の中でこれまで重要な柱として記述されていた防爆電気機器の構造,試験などに関する部分は,指針として必ずしも必要とされなくなり,その内容によっては関係者に誤解と混乱を与える場合もある。

 そこで,当研究所では,現在使用されている防爆指針(1979年版及び1985年新版)の修改正は意図せず,関係者が参考と考える部分を必要な期間だけ任意に活用して頂くこととし,今後は,国際化時代へのニーズに対応して,主としてユーザーを対象とした防爆電気設備に関する技術指針を新しく「ガイド」として制定することにした。

 このガイドの制定に当たっては,構造規格による防爆電気機器と技術的基準による防爆電気機器を対象として,特に国際的な動向を考慮したほか,プラント関連技術,防爆電気機器の製造技術,電気工事の施工技術などの国内における情勢の変化と進歩を考慮した。このため現在のわが国における関係法規その他に必ずしも明記又は詳述されていない内容を包含することになったが,技術的立場から望ましいものであると考え,記すこととした。

 本ガイドが今後関係者において,それぞれの立場で検討ざれ,広く活用されることを期待する。なお,研究設備のように少量の可燃性ガス等を取り扱う場所においても本ガイドを参考にして頂くことを希望する。

 最後に,本ガイドの原案作成に当たり,絶大なるご協力を賜った社団法人産業安全技術協会及び関係委員各位に対して,深く感謝の意を表する次第である。

平成6年10月1日  労働省産業安全研究所  所長  森崎 繁 


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